こんにちは、日向です。
本日は、今年11月に岐阜県可児市が、良品計画と連携協定を締結して、商業施設内にオープンする市立図書館の分館(通称・無印図書館)の件の続報です。
「事業決定までの経緯がわかるもの」を8月に開示請求して出てきたのが、たった10枚の公文書でした(11年前の悪夢を再現した無印図書館~のり弁すら出てこない岐阜県可児市~)。
そこで、可児市の担当部署の方に、こちらの請求の主旨を詳しく説明して、決裁文書だけではなく、打ち合わせ記録や会議録等、詳細な経緯がわかる文書を出していただけるよう、再度開示請求を行いました。
その結果、9月29日付で、トータル175枚の公文書が可児市より開示されました。
開示手数料の納付など諸々の手続を経て、私のところに開示文書が届いたのが10月第一週でしたが、ちょうどほかのことでバタバタしていて、なかなか開示資料を詳しく読む時間がなかったのですが、先週ようやく、中身をざっとですが、確認することかができました。
では、今度こそ、私の疑問を解消するような資料が開示されたのか?といいますと、残念ながら答えは、ノーです。
文書は175枚ありますが、その大半が黒塗りでした。
とりわけ、私がいちばん知りたかった、良品計画からの提案書については、すべて黒塗りでした。タイトルや見出しまでも塗られた完璧な“のりべん”でした。
ツタヤ自治体のなかでも、黒塗りが多いあの和歌山市ですら、CCCの提案書は、ページのタイトルや見出しは黒塗りされておりませんでしたので、可児市の無印図書館プロジェクトに関する開示資料は、それを上回る秘密主義だということがこれで確定しました。
和歌山市民が2017年12月に開示請求して、翌年2018年1月に開示されたカルチュア・コンビニエンス・クラブの提案書。本文はすべて黒塗りされていたが、各文書のタイトルだけは黒塗りされていない。この後、不服審査請求によって、非開示が妥当でない部分があるとされ、黒塗りが一部はずされた文書が3年後に開示された。
あと私が知りたかったのは、良品計画からの提案に対して、市の評価というか審査はどうだったのかという点と、パブリックコメントなどで市民の意見を聞いたのかという二点でしたが、そのどちらも満足のいく開示ではありませんでした。
市の評価ついては、全員の審査委員(市の幹部職員のみで有識者ゼロ)の採点表が全面黒塗り。市民の意見聴取については、図書館協議会の意見等が少し開示されていましたが、市民への意見聴取は一切行っていないことがわかっただけでした。
ちなみに、「図書館の運営に関する情報」については開示決定に「11月23日(無印図書館がオープンする日)以降なら開示可能」という旨が記載されていますが、こういう情報こそオープン前に開示してもらって、市民は意見を述べたいのに、オープンしてからいくら開示されても「もう決まったことにグダグダ文句言うな!」と言われるだけなので、まったく無意味だと思います。
なお、開示をした担当の方にお聞きしたところ、黒塗りをした箇所は、良品計画さんから具体的に「ココは出さないでほしい」とした開示文書へのマスキング箇所の指定を受けて、可児市のほうで再度判断して出したそうです。なので、良品計画さんは開示しないでほしいとしたところも、一部は可児市の独自判断で開示をした箇所もあるとのことでした。
というわけで、私が疑問に思っていた以下のことに答える資料は開示されませんでした。
可児市が公民連携の提案窓口を設けた告知を、たまたまみていた良品計画さん。
なんと2日後に、まるでその日を待っていたかのように「うちが開店する店舗内で図書館をつくりませんか?」という提案を受けた可児市。
良品計画さんは、それまで図書館の運営の経験や実績はゼロ。要するにただの素人。その提案を「それは素晴らしい。すぐにやりましょう!」と、可児市が高く評価した理由は、採点が全面黒塗りされているので、さっぱりわからない。
そのど素人の良品計画さんは、図書館のど素人にもかかわらず、どや顔で「分館では図書館の標準ではない、独自分類をしませんか?」と提案して、これも「素晴らしい。それは採用だ!」と可児市は高く評価した理由もわかりませんでした。
ツタヤ図書館のCCCは、それでもまだ全国的な書店チェインを経営しているという、本に関する実績らしきものはありましたが、良品計画さんは、そんな実績すらゼロのど素人。
そのど素人の良品計画さんは、無印店舗内に市立図書館の分館を設置するコンサルタントとしての提案は行うが、運営はあくまで市の職員。会計年度任用ひとりと派遣社員2人を新規に採用するが、いずれもほぼ最低賃金と思われる。
物珍しさで来館者は増えるかもしれませんが、それがどのように市民生活の向上に寄与するのかは、イマイチ不明確。本を飾ったオシャレなスペースを作りたいのなら、勝手にやればいいのに。
元蔦屋社員で、代官山や六本木で、本を飾っていたキュレーターさんが担当するということだけはわかったものの、それはいわば外注で無印良品のノウハウではない。
なのに、4月に決定して6月議会で総額で2億8000万円の無印図書館をショッピングセンターの無印良品店舗内に設置する予算案が承認された。
この間、市民の意見を一切聞くことなく、商業施設内に図書館の分館を設置する事業について、事業者からの提案を公募したり、コンペを開催したり一切せずに、良品計画の一社のみ評価する、とんでもなくおかしな随意契約。その提案を市の幹部職員だけで、高評価。何度も繰り返しますが、市民の意見は一切聞かず。
おそらく、良品計画さんは、可児市の無印図書館を「成功モデル」にして、今後全国の自治体に無印図書館のセールスをかけていくんだろうと思われます。
TSUTAYAのCCCと同じく、本業がいまいち伸び悩んでいるなか、自治体とのコラボになんとか活路を見出そうとする経営戦略は正しいと思いますが、それがどんな価値を生むのかをよく考えたら、かなり注視しておかないと、ツタヤ図書館の二の舞になるのが目に見えるようです。
全国のショッピングセンターに無印の店舗はあります。消費不況でどこも空きテナントで苦しんでいるなか、自治体がそこを借りてくれたら、またとない経営支援です。無印良品は、自治体が集客してくれて、自治体との連携によって、まちづくりなど新たなビジネスチャンスがザクザク掘り起こせそうです。下手したら、ツタヤ図書館などよりも、はるかに“猛威”をふるうかもしれません。
「地域づくりのための社会課題を解決する」ことに、可児市も良品計画さんも前のめりになっているようですが、それならどうして、ひきこもり対策、就労支援、子どもの学習支援など生活困窮者支援を、官民連携で取り組まないのでしょうか? 2億8000万円もの予算があるのなら、いとも簡単にできそうです。
無印図書館内では、市民の相談を受けつけるスペースも設けるそうなので、ぜひ、ここに専門家を配置してほしいものです。「断らない窓口」として有名な「チーム座間」のように、課題解決のために役所組織を横断してリソースを注ぎこみ、地元企業や地元団体をも巻き込んだ獅子奮迅の取り組みを期待したいと思います。無理でしょうけれど。(参考→【試し読み】生活困窮者支援で注目集める座間市の取り組みとは?/篠原匡『誰も断らない こちら神奈川県座間市生活援護課』)
よろしくお願いいたします。
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