2025年8月2日土曜日

“塗黒的官方文件”のデザイン

 

こんにちは、日向です。


本日は、ちょっとめずらしいものを入手しましたので、そちらをみなさんにおみせしようと思います。


下をみてください。



これなんだと思います? そう、本のカバーです。

昨年10月に刊行した拙著『「黒塗り公文書」の闇を暴く』について、以前、台湾の大手出版社から、その翻訳版を出したいというオファーがきたという話を当ブログでも書いたと思うのですが、

その翻訳版がいよいよ台湾で刊行になるらしく、改めて「先方で制作したカバーデザインがこんなふうになりますので確認してください」ということで、先日、版元の編集者から送られてきたものです。

日本版も、カバー全体が真っ黒な下地で、なかなかインパクトのあるデザインでしたが、台湾版のほうは、さらにミステリアスな雰囲気を醸し出したものになっています。拡大してみましょう。






タイトルは、塗黒的官方文件 となっていて、その字面だけでも、日本語にはないミステリアスな雰囲気を感じます。


凄いのがこのデザインです。

真っ暗な闇のなかに、掌をこちらに向けた人影が、うっすらと映っていて、こちらに迫ってきています。まるでホラー映画のような怖さがあります。


民主崩壞的起點 
一千四百頁的政府文件 
92% 被徹底塗黑! 

という語句が、本書の内容をコンパクトに表現。

そして、ほかの本ならオビのある位置に、これまた本書の内容を端的に打ち込んできています。

不監督,黑幕就會常態化

不監督,公共就會私有化


日本版がそうだったように、台湾版も、本のカバーデザインが、ここまで見事に人の興味をそそるようになっているものはなかなないなぁと、感服しました。


とはいえ、漢字の字面から私が勝手に解釈しているだけで、テキストの正確な意味は少し違うのかもしれませんけれど、なにはともあれ、言葉と文化の壁を越えて、権力にあらがう市民の姿が日台共通のモチーフになっているのかなと思いました。


それにしても、法制度がまったく異なるお隣の国において、何故、日本の公文書問題についての書籍が翻訳されて読まれるのかが、とっても不思議です。

台湾といえば、「天才デジタル大臣」として有名なオードリータン氏が活躍していますから、おそらく行政の透明化を推進するための情報公開制度なんかも、日本の小さな自治体よりは進んでいるのだろうと推察しますが、それでも、こういう出版企画が通るというのは、なにかしら日本と共通した課題はあるんだろうとも思いました。


蔦屋書店がマネした台湾の超有名書店


それともうひとつ、台湾といえば、2019年に日本に初上陸した「誠品生活」を思い浮かべます。

本国・台湾の「誠品生活」は1989年の創業以来、“アジアで最もすぐれた書店”と、その店作りが世界中で注目。本だけでなく、生活にまつわる雑多な店舗が同居していて、金属加工のワークショップなど、カルチャー体験型店舗が目白押し。日本橋にオープンした誠品生活日本橋も書店でありながら、さまざまな“モノ・コト消費”に特化した店舗として人気を集めています。

そういうと、なにかを思い出しますよね。そうです。代官山や六本木にあるCCCの蔦屋書店がマネをした新業態こそが、「誠品生活」なのです。そんな誠品生活のおひざ元の台湾の版元が、誠品生活のライバルであるCCCが進める公民連係事業を進めるなかででてきた黒塗り公文書の本を翻訳出版するというのも、なかなか味わい深いものがあります。

私も、東京・日本橋COREDO(コレド)室町テラスにある同店をよくのぞきます。テーマごとにギッシリと本が詰まった書架が長くつづく売り場は、落ち着いて本を探せますし、「選書コーナー」では、新刊でないタイトルもうまく並べられていて、いまどきの書店にはない「興味をそそる」編集がなされているように感じます。

ちなみに、拙著も、発売から半年くらいは、ありがたいことに、新書コーナーのいちばんめだつ場所においていただいておりました。






「誠品生活」へ行くと、どうしてもCCCの蔦屋書店やツタヤ図書館と比べてしまいます。なにが違うのか、なにが面白いのか、そこを突き詰めていくと、CCCの海外店舗が見た目は派手なのに、いまいち人気が出ていない理由が、なんとなくわかるような気がします。

すみません。支離滅裂な話になってしまいました。

そんなわけで、台湾の方は、“塗黒的官方文件”を、ぜひよろしくお願いいたします。













2025年7月31日木曜日

続々とツタヤ化する自治体一覧~名古屋と横浜も危ない~

 

こんにちは、日向です。


先日、突如はじめましたBJ記事のアーカイブですが、



いまさら、そんな昔の記事を保存しておかなくても、もう落ち目のCCCという会社には自治体を落とす力なんてないのに


そう思われた方も多いのではないかと思います。


しかし、現実は違います。


ツタヤ図書館ウォッチャーの方が、いまもCCCが関与している全国の自治体の動向を丹念に追って、そのつど経過をsnsで発信されています。それをみていると、CCCが受託する案件は決して減ってなんかないことがよくわかります。


2020年以降、コロナ禍と建築資材と人件費高騰によって、一部計画が大幅に遅延したケースはあるものの、受託案件そのものは着実に積み上げてきており、そのほとんどが例によって事業者の選定プロセスがとんでもなく不透明なんですよ。


まあ、政治家案件だったり、どうしてもCCCにしないといけない、なにか特殊な事情があるのか、事前に構想や計画が広く市民に周知されたうえで、パブコメなどによって市民の声を聞くという、まっとうな手法ではなく、先になにがなんでもCCCに任せることが結論が決まっていて、それに合わせて構想や計画を整えたのではないのか、そう疑われるケースばかりなんですよ。


まずは、下の表をみてください。







昨春以降に、CCC運営でオープンする公共施設を一覧にしたのがこれです。


昨年4月には、すでに薩摩川内市のセンノオトがオープン。この3月には、福島県大熊町の産業交流施設と商業施設がオープン(BGタイズCCC共同事業体として受託)しています。


この後、10月には、2021年に決定して、その危うい選定プロセスをさんざんBJに書いてきた沖縄読谷村の総合情報センターがいよいよオープン。また、一度は議会で否決されたCCC運営の複合施設計画が、しがらみのない新市長に交代後、なぜか中古建物改修から建物の新築に変わって、ゾンビのようにCCCが蘇った(共同事業体として参画)山口県宇部市の複合施設も2026年秋にオープン予定となっています。


その下には、2020年から、BJと当ブログにその選定プロセスのおかしさをレポートしました大阪府門真市の複合施設が来春オープンします。


このあたりは、わりとよく知られていますが、問題はこの後です。



2027年春には、福島県白河市が、市民交流スペースを備えた生涯学習センターを整備して、その運営をCCCに任せることになっています。翌年の2028年度には、当ブログで取り上げている香川県坂出市のほかにも、岐阜県瑞浪市、静岡県富士市の新規オープンが予定されています。坂出市だけは図書館ですが、瑞浪市も富士市も市民センターを備えた複合施設です。


興味深いのは、白河市も富士市も、なぜか、施設の運営者を選定する前に、開業準備・運営企画支援等業務業務を担当する事業者としてCCCを選定した際に、「本業務の受託者には運営業務を発注する」と仕様書に明記していることです。


両市とも、その点の説明を求めると、「運営者は別に公募して選定する」と言ってるのですが、実際には、前段階のオマケ業務を受託したら、本体もついてくるみたいなおかしなことをしているんですね。こんなの、完全に違法でしょう。


まぁ、そういう経緯をみていたら、もうガチで応募してくる他社もいないでしょうから、CCCが準備業務を受託した瞬間に、運営も(場合によってはその前の設計も)CCCになるように、画策されている様子がみてとれるんです。


ほんとに、いつまでたっても、官製談合まがいの行為が横行していて、どうして市民の声を聞きながら、公平公正に事業者を選定するという当たり前のことができないんだろうと思いますね。



岐阜県瑞浪市の場合は、運営者を決める前の2023年11月に、社会教育の権限を教育委員会から市長部局に移管する手続きを行なっていて、市民とか専門家の意見をよく聞かないでも、市長の一存でなんでもできるような体制を整えていました。



このあたりは、先行する千葉県木更津市のケースが、ツタヤ誘致自治体の官製談合疑惑の典型ケースとして、これまでさんざん書いてきましたが、その木更津市は、新庁舎整備がゼネコンが辞退したことで計画のやり直しを余儀なくされています。それでもCCC選定は揺るぎないのでしょうか。木更津市内の別のエリアに建設予定の図書館もCCCに任せるのではとささやかれています。



「公共」に巣くうツタヤ



さて、ピーク時に1000店あったTSUTAYA店舗が三分の一まで激減し、2024年段階で、売上高が2019年の4分の1に、営業利益が2018年の60分の1にまで激減した瀕死のCCCですが、では、図書館や市民センターをはじめとした公共施設の運営に活路を見見いだせるのかというと、いくら自治体が一企業の養分になったところで、どこも規模は小さいですから、すぐにそれらが経営状態を改善できるほどの利益をもたらすとは思えません。


そういうなかで、今後、CCCが起死回生の策として乗り出してくるであろうエリアが大都市部です。


意外に思われるかもしれませんが、これまでツタヤ図書館とか、ツタヤ公民館と呼ばれるものは、県庁所在地である和歌山市を除くと、人口5万人~十数万人という小規模の自治体でした。大都市は、すでにあるTSUTAYAや、あるいは蔦屋書店、T-SITEが出店して、完全に民間店舗として出店する。一方で、人口の少ない地域については、民間店舗としてはうま味がないため、公共施設を受託することで運営費をもらいながら、激安でブックカフェを出店する戦略で展開してきました。


ところが、大都市部でもTSUTAYAが次々と閉店していくし、T-SITEもガラガラで閑古鳥がないている状態となれば、もう遠慮はいらないですよね。そう大都市でも公設ツタヤをつくればいいんです。


ここへきて、そのターゲットになっているのが、名古屋市と横浜市です。





まず名古屋市については、「(仮称)星が丘ボウル跡地プロジェクト」というのが進行しておりまして、すでにその計画エリア内に蔦屋書店が出店することが決まっているんです。民間企業(東山遊園株式会社)が地権者ですから、どこの事業者とコラボするかは市民に聞くことなく勝手に決められるわけです。ところがおかしなことに、事業エリア内に新図書館を併設する計画になっていて、こちらは、千種区・東区・守山区・名東区の4区の中核となる、名古屋市初の「アクティブライブラリー」が誕生する予定とアナウンスされているんです。


もちろん、運営者はこれから選定されるんですが、すでにエリア内に蔦屋書店が決まっているわけですから、ははーん、これ、密かにツタヤ図書館にしようとしているなと、名古屋市民の間では、ひところ大騒ぎになったほどでした。実際には、どうなるのかわかりませんが、賑わい創出型図書館とくれば、CCC選定を前提にして動いていると考えて身構えるのが自然です。



「(仮称)星が丘ボウル跡地プロジェクト」
星が丘グループ 東山遊園株式会社プレスリリースより




そして、もっと危ういのが横浜市です。横浜市には、2025年5月にCCCが東京・六本木から西区・みなとみらいに本社を移転したばかり。移転先の「横浜コネクトスクエア」には、CCCグループのCCCMKホールディングスやCCCライフパートナーズも移転しました。


日経新聞の報道によれば、CCCは、横浜移転によって5年間で6億2440万円の法人事業税が免除されるとか。そのタイミングで横浜市は「大型図書館を整備する」と発表。横浜市には、図書館は各区1館ずつの計18館しかなく、市民1人当たりの蔵書冊数は1・1冊(2022年度)で、政令指定都市では最も少なかったそうで、その状況を改善するために新図書館は必要。加えてグループ学習や談話、飲食などが可能な空間を備えた大型図書館を整備する計画というんですから、これは危ういです。


横浜市は、CCCに税金を免除したあげく、仕事まで用意するのか!


と憤慨する市民も続出。



同じ神奈川県で、武雄市につづく第二のツタヤ図書館として2015年にオープンした海老名市では、市民のCCC運営批判が激しかったことからすれば、もし横浜市でツタヤ図書館オープンとなれば「図書館戦争ふたたび!」となりかねません。いま行われている市長選挙の争点にはなっていませんが、現市長が再選されれば、横浜市のツタヤ図書館はかなり現実味を帯びるのではないでしょうか。


CCCにとっては、全国の大都市へ展開する起死回生の足がかりになるのは間違いありませんので、これは目が離せません。


あとは、完全な公設民営の施設だけでなく、公費が入りそうな民間施設の運営もCCCにとっては、生き残りのための貴重な活路になりそうです。


2024年に鹿児島県薩摩川内市に九州電力がオープン(市が土地を貸与)した市民交流施設「センノオト」の運営を受託したのがその典型例で、道の駅とか、地方のちょっとした賑わい施設に、CCCお得意のブックカフェや、都市部なら商業施設に、公的な補助金がらみでシェアラウンジを出店する例もゾクゾクと出てくるはずです。


センノオトや大熊町の産業交流施設などは、当然、電力会社による市民への広報活動を全面的に支援する形になりますので、ある意味“原発マネー”に巣くう戦略といえるかもしれません。


そんなわけで、いかに公共に寄生するかが、もしかしたら、CCCにとっての大きなテーマと言えるのではないかと思います。あなたの住む街にも、いずれCCCが密かに迫ってくるかもしれません。


今後も、CCCの動きからは目が離せません。





2025年8月1日追記】

ツタヤウォッチャーの方から、CCCが運営に参画が決まっている自治体としては、私がここに取り上げたところ以外にも、「岐阜県高山市、沖縄県うるま市、経済産業省内多目的スペースがあり、埼玉県春日部市と岩手県紫波町が計画・構想段階の業務を受託している」との情報提供をいただきました。後日、詳細わかりましたら、お知らせしたいと思います。



2025年7月29日火曜日

BJアーカイブ・2015年12月その2

 

こんにちは、日向です。


昨日、私がBJに最初に書いたツタヤ図書館問題についての記事として、2015年12月に掲載された記事を再録しました。


ツタヤ図書館、ラーメン本購入し郷土資料を大量廃棄、小説『手紙』が「手紙の書き方」棚 (次々と消されていくツタヤ図書館批判記事・2015年12月)


これ最後まで読んで、あれっ? なんかヘンと思いませんでしたか?


そう、尻切れトンボなんですよ。行数の関係で、あまり長くならないよう、締めの言葉を省いた原稿もたまに書いていたかもしれませんが、それにしても、これは、いまいちしっくりこないなぁ。そう思って、当時、編集部に送ったメールを探してみたら、その理由がわかりました。


結論から言えば、これ前編・後編に分かれた記事で、その前編だったんですよ。12月8日と記事の左上に日付がありますが、おかしなことに、その日以降にあるはずの後編の原稿がみつかりません。


で、もう一度12月8日付けとして掲載された記事の原稿をみてみると、一本の原稿のなかに、しっかり後編部分も入っていました。


つまり、前回ご紹介した記事の掲載日だと思っていた12月8日は、このアーカイブがとられた時点での最終更新日。BJサイトのリリースはその前日の12月7日で、翌日の12月8日には、後編がリリースされているはずなんです。


そう思って魚拓を探してみましたら、ありました。以下のトタイルの記事が。


ツタヤ図書館の異常なビジネスモデル 激安賃料&書店併設のオイシすぎる商売


週刊東洋経済が行った増田宗昭社長(当時)の単独インタビューのなかのコメントを引き、この頃ようやくおぼろげながらみえてきた“ツタヤ図書館商法”のカラクリを解説する記事にしました。


このときに、CCC批判の傍証にさせていただいたのが、のちに海老名市を相手どって住民訴訟を起こした南室さんのブログでした。


南室さんは、蔦屋書店とスターバックスが海老名市に収めている賃料があまりに安すぎるという証拠資料をキッチリと開示請求によって入手していました。


この情報は、ツタヤ図書館ウォッチャーたちの間にまたたくまに広がっていきましたが、残念ながら、それが批判の的になるまでには発展しなかったように記憶しています。


当時の私のスタンスとしては、「ネット等で騒がれているツタヤ図書館問題を、わかりやすくまとめておこう」というものでした。


なので、この後、次第にツタヤ図書館の話題が沈静化していけば、この記事が最後になって、その後、ツタヤ図書館問題の「沼」にのめりこむこともなかったのですが…。


ということで、BJより、昨日のつづきの後編記事を以下に再録しておきます。


よろしくお願いいたします。




 

ツタヤ図書館の異常なビジネスモデル 激安賃料&書店併設のオイシすぎる商売

【この記事のキーワード】

「海老名市立図書館 HP」より
「あのね、CCCってオバケなんだよ」
「みんな見えない。見たことがない」

 レンタルビデオチェーンTSUTAYAを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の増田宗昭社長は、「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/10月31日号)のインタビューで、自社の既成概念にとらわれない新規事業展開をそう表現している。

 同社が運営する公共図書館、通称「ツタヤ図書館」についても、いまだにその実態が一般市民には見えてこない。多くの人に見えているのは、公私混同のビジネスモデルだ。

 すなわち、居心地のいいオシャレな「公」の図書館で客寄せをし、その客が「私」のカフェや書店・レンタル店でお金を落とす。しかも、その客の行動データは、図書館の貸し出しにも公式採用(利用者が希望した場合)されたTカードによって、もれなく収集する(ただし図書館の貸し出しデータについては、返却後破棄されることになっている)。

 公共図書館の部門においては、開業時に改装費用を一部負担(武雄市の場合は総額7.5億円のうち3億円)するものの、公費によって運営する代行業のため、大きな赤字に陥るリスクはない。税金で商業施設レベルのハコモノをつくってもらい、「無料貸本屋」に客は殺到し、その周辺で儲けられるという皮算用だ。

 ツタヤ図書館の収益構造の秘密を知るうえで非常に興味深い資料が9月、ある市民の情報開示請求によって公開された。海老名市長からCCCに対して交付された海老名市立中央図書館建物の「使用許可書」である。

 それによれば、使用許可面積は541.67平米で、使用許可箇所は書籍販売及び喫茶の営業のために使用。つまり、中央図書館併設の蔦屋書店とスターバックスへの賃借許可といえるのだが、驚くのは賃料の安さだ。

「1平米当たり6458円」とされており、単純計算で年額約350万円。月にすればたった29万円だ。同館周辺の民間ビルの賃料相場から換算すると、この広さのテナントであれば、月500万円、年額6000万円は下らないとの試算もある(『疑惑の図書館建物使用許可・ナムラーのブログ』)。

 この試算に従えば、この賃料は世間相場の17分の1ということになる。使用許可書には、そのほかの費用負担の規定もあるため、実際にはもう少し出費は膨らむだろう。いずれにしろ、公共図書館併設という好条件で労せず集客できるうえ、破格の賃料でカフェや書店・レンタル店を経営できる“おいしい”ビジネスは、これまで誰も見たことがないオバケそのものである。


 増田社長は武雄市図書館に関して、「今は行政の方があちこちから毎日見学にいらしていて、『うちでもやってくれ』『見に来てくれ』と行列をつくっている状態だ。僕らがやるとコストが下がるというのもある。すべてセルフPOSだし、実際には本のレンタル屋だ。要するに『図書館なんてものはない』。名前は図書館だが、本のレンタル屋だ」発言している。つまり、公共図書館もあくまでレンタル業と同じで、ビジネス利用の一手段として取り込もうという狙いが透けて見える。

 それにしても、CCCに関する疑惑の多くは、マスコミ報道ではなく、ツタヤ図書館に強い違和感を抱いた一般市民らが行った情報開示請求によって表面化したものばかりだ。

 彼らの粘り強い追及によって、ツタヤ図書館の正体が徐々に暴かれているが、世間の厳しい批判すらも成長のための栄養にしているかのように、CCCのオバケは増殖力を強化している。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト


※2025年7月29日・日向注釈

“公共図書館の部門においては、開業時に改装費用を一部負担(武雄市の場合は総額7.5億円のうち3億円)する”とあるが「CCCが武雄市の開館時に3億円を負担したということを証明する資料はない、事実と異なるのではないか」との指摘がなされている。













2025年7月28日月曜日

次々と消されていくツタヤ図書館批判記事・2015年12月

 

こんにちは、日向です。


先日、ビジネスジャーナル連載終了のお知らせ に書きましたように、


2015年頃からBJに寄稿してきたツタヤ図書館関連の記事が次々とアクセスできなくなっています。


いつからそうなったのかははっきりしませんが、今年3月に運営会社が代わってから、アクセスできなくなっているページが急増しているようです。


ヤフーニュースなんかとは違って、BJは、これまで過去記事も消さずにアーカイブとして残しておいていただけたのに、突然の方針転換に少し戸惑っているところです。

そこで予告しておりましたように、すでに消えてしまった記事を当ブログに取り急ぎ、転載することにしました。


CCCにとっては、昔のやらかしをいつまでも蒸し返されてはたまったものではない、「忘れ去られる権利くらいある」と主張したいところでしょうけれど、坂出市など、現在進行中の受託案件でも、かつての不祥事と似たようなことが起きかねませんので、やはりツタヤ図書館問題とはどういうものだったのかを記録しておくためにも、過去記事は残しておくべきと思います。


本日は、ツタヤ図書館問題について、おそらく私が本格的に書いた最初の記事(2015年12月)を以下に再録しました。


当時を振り返って、少しコメントしておきますと、2015年10月の海老名市でのオープン直前に、武雄市で起きたクズ本問題や郷土資料廃棄事件、ライフスタイル分類、Tカード個人情報漏洩不安などが次々と噴出して、このときだけは大手メディアもこぞって取り上げていた時期です。

その流れにのって、いくつか気になったトピックスをまとめだけの記事です。とりたてて独自性はなく、後追い記事という印象ですが、それでも、ネットニュースとしてはよく読まれた記事だと思います。


ちなみにタトイルに「ツタヤ図書館」とついた記事は、この前にも何本が出していますが、いずれも私が個人的に関与した東京・足立区の事件をフォーカスしたもので、ツタヤ図書館に関する記述が乏しいものでした。


今後もできるだけ数多く過去記事を復活させたいと思いますので、もし私が忘れている記事がありましたらご指摘いただけると幸いです。


よろしくお願いいたします。


 

ツタヤ図書館、ラーメン本購入し郷土資料を大量廃棄、小説『手紙』が「手紙の書き方」棚

「海老名市立図書館 HP」より
 2013年のリニューアルオープン以来、2年間で約170万人もの来館者を集め、ほかの自治体からの視察が後をたたず、「成功モデル」ともてはやされた佐賀県・武雄市図書館。同館は、明るく開放的な読書スペースに、お洒落なカフェや新刊書店とレンタル店を併設した“新感覚の図書館”として話題を呼んだ。レンタルビデオチェーンTSUTAYA(ツタヤ)を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が運営していることから、通称「ツタヤ図書館」とも呼ばれている。

 ツタヤ図書館は、10月に神奈川県海老名市に誕生したのに続き、来春には宮城県多賀城市にもオープンが予定されている。今後、全国各地に広がっていきそうな気配だが、その勢いとは裏腹に、CCCに対する批判が日を追って激しくなっている。いったい何が問題となっているのか、あらためて整理したい。

系列会社から古本を大量購入?

「よそが捨てたゴミ本で埋まっている!」

 他館の司書が武雄市図書館の初期蔵書入れ替えリストを見たら、きっとそう思ったに違いない。次々と新しい本が入ってくる公共図書館では、スタッフが常時書架をチェックして、資料価値が著しく減じた本を棚から「除籍」する作業は欠かせない。それによって、常に一定水準の質を保った棚を維持しているのだ。しかし武雄市図書館では、リニューアルオープン時に、『ラーメンマップ埼玉2』(ラーメン探検隊/幹書房)、『公認会計士第2次試験2001』(TAC出版)など、出版年度が著しく古く「除籍本リスト」と見まがうような資料価値の低い本を中古で約1万冊も購入していたことが7月、市民の情報公開請求によって判明した。

 そのリストを見た図書館関係者は、「毎日コツコツ除籍した本が、一度に逆流してきたみたい。すごい悪夢ですね」と、思わずため息を漏らす。

 しかも購入先が、当時、同社と資本関係のあった新古書店だったため、「系列会社の在庫処分に図書館を利用したのではないか」との疑惑すら浮上した。

 騒動後、武雄市は「高層書架の安全対策のために書籍購入費2000万円から1300万円流用したために、残りの費用で中古本を購入することになった」旨の釈明をしたが、かえって公費使途の不透明さが浮き彫りになったばかりか、本よりも設備にカネをかけている事実も市民の不評を買うことになった。

 さらに、地域の図書館として本来大切に所蔵されるべき郷土資料に加えて、併設のレンタル店と競合しそうな人気のDVDやCDを、市民に説明もなく大量廃棄していたことも批判の的になった。ここに至って、それまで図書館の民間委託に賛同していた人たちからも、「とんでもない公私混同」と怒りの声が渦巻いた。

 ちなみに、筆者の著作を武雄市図書館のサイトで検索してみたところ、同館には21冊所蔵されていた。その中には、雇用保険関係の同じタイトルの古い本が4冊(04年版、05年版、09年版、12年版)もあったが、今年発行した最新版は所蔵されていない。この著作は、法改正等に合わせて内容を改定し、巻末に過去の法改正履歴も収録しているため、新しい版を入れたら古い版は除籍されるべきものである。

司書も本を探せない

“図書館の命”ともいわれる選書に加えて、本の分類方法でも問題が浮かび上がった。

 10月、2館目のツタヤ図書館としてオープンした海老名市立中央図書館では、一般の図書館が採用する標準的な分類法とは異なる「ライフスタイル分類」という独自方式を採用している。「本との出会い」を演出する仕掛けらしいが、どこに何があるのかがわかりづらく、所属の司書ですら本を探せない事態が続出した。

 たとえば、小説『手紙』(東野圭吾/文藝春秋)は「手紙の書き方」、『旧約聖書』の「出エジプト記」は「海外旅行」、『雁』(森鴎外)は「鳥類図鑑」、さらに松尾芭蕉の『奥の細道』関連の本は「国内旅行」という棚に、それぞれ分類されていることがインターネット上で笑いのネタとして駆け巡った。

 海老名市立図書館の管理運営はCCC単独ではなく、業界最大手の図書館流通センター(TRC)が共同事業体として参加しているが、そのTRCの谷一文子会長は次のように不満をぶちまけている。

「(ツタヤの独自分類は)系統立てて理解することが第三者にはできない。たとえて言うなら、図書館の書架が個人の本棚のようになっている。好きなように分類した当事者にとってはわかりやすいかもしれないが、第三者にはまったくわからない」(12月4日付東洋経済オンラインTSUTAYA図書館に協業企業が呆れた理由』より)

 結局、両社の溝は埋まらず、指定管理スタートから1カ月もたたないうちにTRCが「基本的な思想が違う」として、CCCとの協業関係の解消を表明。その後、一転して「指定管理期間満了までは協力関係を継続する」と態度を変えたものの、一連の騒動はツタヤ流の図書館運営がいかに独善的であるかを世間に強く印象づける結果となった。



 さらに、貸し出しカードTポイントを導入することで個人情報保護に対する不安の声が上がったほか、公共部門の図書館と商業部門の併設書店やカフェとの境界線の不明確さ、誘致方法や指定管理者選定プロセスの不透明さなど、さまざまな疑念が次々と浮かび上がっている。そのなかでも最も世間の反響が大きかったのは、公共図書館としての基本機能に対する不信感だった。

 いくら外観や内装が素晴らしく居心地のいいスペースであっても、肝心の図書館としての機能がお粗末であることが次第に浮き彫りになってきたわけで、その象徴的出来事が「選書問題」だったのである。

 その意味では、地元紙・神奈川新聞が海老名市立中央図書館のリニューアルオープン直後に自社サイト・カナロコに掲載した館内写真は、本好きの市民にとってはさぞや衝撃的だったことだろう。最上段の棚には、中が空洞のダミー本が並んでいる。カナロコは「偽物を飾る『カフェ』」と題して痛烈に皮肉っている。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト








2025年7月25日金曜日

しんぶん赤旗が7月13日の講演会を取り上げてくれました

 

こんにちは、日向です。


本日は、簡単な告知です。


タイトルの通り、赤旗の日刊紙が、7月13日に東京の図書館をもっとよくする会で行った、私の講演を取り上げていただきました。


どうせベタ記事かなんかでしょう?


そう思われるかもしれませんが、本紙をみてみますと、くらし・家庭面の3分の2のスペースを使って、私の講演内容を詳しく記事にしていただいていました。






講演でもお話ししましたように、ツタヤ図書館問題は2015年に、武雄市で起きた古本騒動や郷土資料廃棄などが大きく取り上げられることはあったものの、その後は尻すぼみ。


CCC運営で次々開館した自治体の地元メディアでは、わが街にもオシャレなカフェ併設の図書館がオープンしたとか、来館者が、ついに何万人突破した(カフェ・書店客含む)とか、フリーペーパーと見紛うほどの礼賛報道しかみかけないようになりました。


そういうなかで、「黒塗り公文書」という切り口から、私がケーススタディとした和歌山市民図書館で起きた官製談合疑惑について、赤旗の記者さんは、指定管理者制度など、その背景についてもキッチリと問題意識を持っていて、なかなか迫力のある記事にしていただきました。


「赤旗」は共産党の機関紙ではありますが、実際にその紙面にふれてみますと、ごくフツーのメディアとして読めてしまいます。


いや、ごくフツーどころか、全国紙を出し抜くスクープを連発している“クオリティペーパー”なのです。


最近では、自民党議員の裏金問題を、丹念な公文書の掘り起こしによって見事にスクープしたのは赤旗であり、もしあの一連の報道がなければ、与党過半数割れによって、10数年ぶりに国会での議論が活発化することなど、到底ありえなかったでしょう。


そういうメディアが拙講を取り上げていただいたのは、たいへん光栄に思っているところです。


ご関心のある方は、以下のページで試し読みの手続きをしてみてください。


しんぶん赤旗試し読み(3週刊無料)



よろしくお願いいたします。


2025年7月24日木曜日

坂出市教育委員会が開示した140枚のカラ文書

 

こんにちは、日向です。


本日も、香川県坂出市のツタヤ図書館について、情報開示請求を行なった結果、開示された公文書について書いておきたいと思います。


開示されたのは、市長部局(公民連携DX課)が約2300枚、教育委員会が約140枚の計2400枚でした。






一刻も早く一般公開して、みなさんにみていただこうと思っていたのですが、これだけの分量があると、グーグルドライブの容量が逼迫しかねないので、市長部局の分は後回しにして、とりあえず先に教育委員会が開示した分だけ、公開したいと思います。(大容量のデータを公開するのに、なにかいい方法があったら、みなさん教えてください)


坂出市教育委員会が開示した資料の一覧


↓全文は、ココにあります。

坂出市市教育委員会 開示資料一括



ざっとみていただければ、わかると思うのですが、肝心要の教育委員会が市立図書館の移転について決裁した文書は一枚もみあたりません。


各地の視察報告(私が例示して開示を求めました)と市長部局からの要請で作成したと思われる新図書館の業務要求水準書が冒頭にきいています。そのほかは、ふだん通り定例的に開催されている図書館協議会の会議録がほとんどです。そこには、途中から駅前に移転する図書館に関して、関係者が説明していることがわかる文書は出てくるものの、教育委員会として、この問題を正式に検討したことがわかる文書は、どこにもありません。


通常の協議会の議題が次々とこなされていくなか、唐突に新図書館構想のパンフレットが出てきたりします。また図書館利用に関する調査結果が出てきたり、著名な講師を呼んだ勉強会が開催されていたり、ワークショップが開催されていたりはするものの、正面切って、いまある図書館を移転すべきかどうか、移転するならどこにすべきか、さらには駅前移転の計画は適切かなどについての議論が行なわれた形跡は微塵もありません。


なのに、CCCが運営者に決まった後、新図書館での図書館ボランティア活動の意見交換会が開催されていたりします。その意見は、ご丁寧に、ほぼすべて黒塗りという有様です。


だとしたら「教育委員会内部で新しい図書館について検討したことがわかる文書」等については「不存在」決定を出すべきです。そうせずに、関連文書だけ大量に出してきてお茶を濁すというか、目くらましをするというか、市民を煙に巻くというか、とにかく、さんざんお願いして「こうしう文書がほしいんですよ」と要請しているにもかかわらず、その文書についての存否すら答えずに、どうでもいいものだけ大量に出してくるという不誠実な対応には、ほとほとあきれ返ります。




坂出市教委は、ちゃんと正式な議題に上げて、この件について委員が意見を出した結果、教育委員会として新図書館建設・移転を承認していないのですから、行政の手続きに重大なる瑕疵があるというべきでしょう。



市立図書館を管轄する教育委員会での決裁がないわけですから、この後、市長部局で出された図書館建設・移転に関する決定はすべて無効ということになってしまいます。


市民の方は、ぜひ、住民訴訟を提起されることをおすすめします。


しつこいようですが、これまでもさんざん述べてきたように、図書館の権限を市長部局に移管していないのですから、いまある市立図書館を閉鎖して駅前に新しい図書館を建設するということになりますと、教育委員会での手続きは必須のはず。


そんな手続きはいらなんいんだ、みんな賛成して喜んでるんだから


そう有福市長は言うかもしれませんが、行政として最低限守らなければらないルールを強引に捻じ曲げたのだとしたら、まさに前代未聞の出来事です。


そして、そのような経緯をまったく報じることなく、ツタヤ図書館礼賛記事をこれから書くであろう地元メディアも同罪でしょう。


ということで、取り急ぎ、坂出市教委の開示文書をアップしておきますで、なにかお気づきのことがありましたら、教えていただけると幸いです


よろしくお願いいたします。


日向



↓市長部局の開示と同じく、教育委員会の開示についても、6/30付で審査請求を行いました。


審査請求書

2025630日  

                                     

   坂出市教育長殿

   審査請求人 

          日向咲嗣    


(連絡先 hina39@gmail.com




次のとおり審査請求をします。


1 審査請求に係る処分の内容

坂出市教育委員会の令和7328日付けの公文書開示決定書に関する処分(坂教図第5046)


2 審査請求に係る処分があったことを知った年月日

   令和年7415



3 審査請求の趣旨

  1. 「一部を公開することを決定」「不開示部分については開示しない」を取り消し「全部公開する」との裁決を求める。ただし、請求分のうち「教育委員会が新しい図書館について検討したことがわかる文書」については、「不存在」とする裁決を求める。


4 審査請求の理由

審査請求人は、20249月頃、図書館等の公共施設の運営管理を受託した先で数多くの不祥事(武雄市・海老名市で住民訴訟3件等)を起こしているカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)を、坂出市が駅前に建設予定の新しい市立図書館の運営者に選定したことをニュース報道で知り、なにゆえ、そのような問題多発企業を坂出市は選定したのかと大きな疑問を抱いた。

とりわけ20192月、同社は、基幹事業であるTSUTAYA(当時のTSUTAYA代表取締役会長は、増田宗昭CCC社長)が消費者庁から景品表示法違反(優良誤認)を認定された結果、11753万円もの課徴金を課せられている。そのような社会的不正行為を働いたことが広く認知された以上、今後、同社が対外的に自社の事業成果をアピールする公共の事業に参画する資格は、完全になくなったととらえていただけに、坂出市が新図書館の運営者にCCCを選定したことへの驚きは大きかった。


そこで、審査請求人は、坂出市に対して、令和7129日付文書にて、駅前に建設が予定されている坂出市立図書館事業について、教育委員会内部で検討したことがわかる文書」等を請求したところ、4月末頃、147枚の文書が開示資料として送られてきた。しかし、その送られてきた資料の中には、坂出市教育委員会内部において、駅前に新しい図書館を移転することの是非や、その必要性、駅前移転の優位性とデメリット、今後の課題、あるいは新しい図書館はどうあるべきかなどについて、詳細な議論したことがわかる文書や、そのプロセスを経て新図書館の移転を教育委員会が正式に承認・決済したことがわかる文書は一枚もなかった。詳細な検討プロセスはなにもないまま、唐突に新図書館構想に関するリーフレットが出てきたり、まだなにも決まっていない段階のはずなのに、駅前再開発エリアに図書館をつくることがすでに内定されているかのごとく、外部の専門家を招いた職員向けのワークショップに関する資料が開示されたにすぎない。

これが同市教育委員会が保持している、審査請求人が請求した内容に関連する文書のすべてだとしたら、図書館を駅前に移転して建替え、いまの中央図書館は廃止し、その運営を民間企業に委託するという、地元市民にとっては、このうえもなく重大な事柄について、所管する教育委員委員会では一度も議題にのぼることがなく、もちろんその承認も一切経ておらず、民間委託へ向けた条例の改正もなく進められていたことになる。

坂出市は、市立図書館等の教育文化施設の権限を市長部局に移管しておらず、新しい図書館を建設するのであれば、所管する教育委員会での承認・決済が必須のはずである。

そうした必須の手続きを経ていないならば、審査請求人の開示請求に対して「不存在」決定を出すできである。にもかかわらず、請求されていない文書ばかりを出してきた市教委の対応は、そのような不法行為をごまかすために市民を煙の巻く行為をしたのではないかと指弾されても仕方ないだろう。

また開示された文書についても、企業の競争上の利益や、未成熟情報であることを理由に一部黒塗りされているが、その非開示理由は、情報公開条制度の主旨からはかけ離れたものばかりである。全国が注目している今回のような図書館事業において、文書を黒塗りにしなければならない理由はみあたらない。このような公文書の恣意的な黒塗りは、決定プロセスを完全に秘匿した「暗黒行政」そのものである。

行政による情報開示の目的は、公費が投入される事業が公正公平に行われたことを市民に広く理解してもらうためである。

しかるに、坂出市は、今回、そうした説明責任を果たそうとする前向きな姿勢がほとんど感じられない。市民へ理解を求めることよりも、受託企業の利益を最優先にしているようにみえる。

このままでは、坂出市の行政は透明性がきわめて低く、公正公平に事業者を選定していないのではないのかという印象を広く世間に与えることになるだろう。


5 処分庁の教示の有無及びその内容

「この決定に不服がある場合は、この決定があったことを知った日の翌日から起算して3月以内に、審査請求をすることができます」との教示があった。






2025年7月23日水曜日

図書館移転を決めた会議の議事録がない坂出市


こんにちは、日向です。


本日は、JR坂出駅前にツタヤ図書館を核とした複合施設を建設する件についての続報です。


2025年1月28日火曜日


事業決定からCCCが選定されるまでのプロセスがわかる文書を1月末に開示請求しておりましたところ、4月下旬、市長部局と教育委員会から別々に開示対象文書が送られてきました。

市長部局の分だけで、ざっと2300枚にも。一方の教育委員会のほうは147枚と少なく、いずれもCDに収納したデータで開示されました。なので、手数料はそれぞれ50円、計100円で済んだのは、とてもありがたかったのですが(和歌山市なら、CDで開示しても1枚10円の手数料を取られます)、

私がいちばん知りたかったことが書かれた文書

すなわち、坂出市は、いつ、誰が出席した、どのような会議で、駅前に図書館を移転して複合施設を建設することを正式に決めたのか

――は、どこにもないんです。市民に対するアンケートとか、市民参加のワークショップの記録やコンサルタントによる報告書、各地の視察記録はあるのに、それらの検討を経て、市当局が、いまある図書館を廃止して、駅前再開発の複合ビルに図書館を移転するという事業計画を正式に決定したことが分かる文書がどこにもないんです。

教育委員会のほうからは、事前に、そういう文書(新図書館について検討して決裁したことがわかる文書)は「ない」といわれてましたので、「やはりそうか」で終わるんですが、さすがに2300枚も出してきた市長部局のほうは、なにかしらそれに類する記録があるはずと探してみましたが、いくら探しても、どこにもみあたりませんでした。

そこで、ついさきほど、担当課に電話をして、こう聞いてみました。

――昨年、事業者を公募するにあたって、駅前に図書館を移転して、このような複合施設にするという最終方針が決まったことがわかる文書はどこにありますか?


答えは

そういうのは、ありません。

――えっ、庁内の会議で決まったんですよね?

はい。教育委員会からも出席した検討会議で決まりました。

――その会議録は?

ないです。

――えっ、作成してないの?

はい

――重要なことなのに?

はい

――坂出市には、公文書作成ルールはないの?

ないかどうかは、すべて条例を把握しているわけではないので、わかりません。

――はぁ、坂出市は、重要なことを決めるのに、会議録を作成しなくてもいいということですね。

……。


そもそも、図書館を管轄する教育委員会において、新図書館の建設・移転について決裁した文書が一枚もなく、図書館サイドは「そういうのはすべて公民連携課で決めている」と言ってたのに、結局、市長部局でも、この件に関する検討会議の記録はないということなんですよ。

もちろん、庁内の「検討会議」を経て決定しているというのは事実なんでしょうけれど、行政がその決定を示す文書を一枚も残さないというのは、いくらなんでも酷くないですか。

やっぱり、市長の鶴の一声によって、駅前の再開発ビルに図書館をもってくることが決まったのかなぁという印象を再度持ちました。


そのほか、結果的にCCCが選定されたコンペでの、事業者の提案や選定プロセス・採点等については、例によって黒塗りだらけで、なにがなにやらさっぱりわかりません。

どうでもいい書類を大量に開示することで、市民を煙に巻こうとしているかのような対応だと感じました。

ただし、ありがたいことに、坂出市は市内在住者だけでなく、誰でも開示請求できる自治体なので、不服がある場合は審査請求ができます。

そんな貴重なチャンスを活かさない手はないと思いまして、先月末付けで審査請求書を出しておきました。


とりあえず、教育委員会のほうからは「受理しました」という通知をいただいておりますので、これから審査会の委員の先生方に、一部不開示とされた黒塗り等が適切かどうかをご審議いただけるものと期待しております。

よろしくお願いいたします。





審査請求書

2025630日  

                                     

   坂出市長殿

   審査請求人 

          日向咲嗣                                                       (連絡先 hina39@gmail.com




次のとおり審査請求をします。


1 審査請求に係る処分の内容

坂出市教育委員会の令和7331日付けの公文書開示決定書に関する処分(坂公第5540


2 審査請求に係る処分があったことを知った年月日

   令和年7415



3 審査請求の趣旨

当該文書について、「一部を公開することを決定」「不開示部分については開示しない」を取り消し、「今回、開示請求のあった文書については、全部公開する」との主旨の裁決を求める。


4 審査請求の理由

審査請求人は、20249月頃、図書館等の公共施設の運営管理を受託した先で数多くの不祥事(武雄市・海老名市で住民訴訟3件等)を起こしているカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)を、坂出市が駅前に建設予定の新しい市立図書館の運営者に選定したことをニュース報道で知り、なにゆえ、そのような問題多発企業を坂出市は選定したのかに大きな疑問を抱いた。

とりわけ20192月、同社は、基幹事業であるTSUTAYA(当時のTSUTAYA代表取締役会長は、増田宗昭CCC社長)に消費者庁から景品表示法違反(優良誤認)を認定された結果、11753万円もの課徴金を課せられている。そのような社会的不正行為を働いたことが広く認知された以上、今後、同社が対外的に自社の事業成果をアピールする公共の事業に参画する資格は、完全になくなったととらえていただけに、坂出市が新図書館の運営者にCCCを選定したことへの驚きは大きかった。


そこで、坂出市に対して、令和7129日付文書にて「駅前に建設が予定されている坂出市立図書館の運営者にCCCが選定されるまでのプロセスがわかるもの」を請求したところ、4月末頃、2290枚の文書が開示資料として送られてきた。しかし、その送られてきた資料の中には、CCCが具体的にどのような提案を行ったのか、また競合する他社と比較して同社のどのような点が高く評価されて選定に至ったのかがわかる文書は一枚もなかった。それらしき書面はすべて黒塗りされていた。


坂出市は、公募に参加した企業の競争上の利益や、選定委員の意思決定の中立性を理由に、これらの情報を非開示としているのだろうが、その非開示理由は、市民に理解を得ることよりも、公募に参加した企業の競争上の利益や選定委員の秘密を、最優先するという意味にしかとらえられない。全国が注目している今回のような図書館運営の公募において、文書をことごとく黒塗りにしなければならない合理的な理由がみあたらない。決定プロセスを完全に秘匿した「暗黒行政」そのものである。

選定された事業者のプロポーザルは、「これからこのような事業を行います」という市民に対する約束という意味合いもあるのに、その内容すら秘匿してしまうと、ただでさえCCCは、全国の受託施設で問題を起こしていて、その評価に疑問符がついているのに、そのうえ、選定の対象となる提案内容すら知ることができないとなると、ますますCCC選定には、何か裏があるのではないかとの疑念を抱かざるをえない


行政による情報開示の目的は、公費が投入される事業が公正公平に行われたことを市民に広く理解してもらうためである。

しかるに、坂出市は、今回、そうした説明責任を果たそうとする前向きな姿勢がほとんど感じられない。市民へ理解を求めることよりも、受託企業の利益を最優先にしているようにみえる。

ついては、再度、CCCを選定した理由が、誰でも容易に理解できるよう、CCC及び競合他社の提案内容の詳細がわかる書面や、その提案内容を審査した審査委員がどのような評価を行ったのかが詳しくわかる資料を開示していただきたい。

もし、それができないのであれば、坂出市の行政は透明性がきわめて低く、公正公平に事業者を選定していないのではないのかという印象を広く世間に与えることになるだろう。


5 処分庁の教示の有無及びその内容

「この決定に不服がある場合は、この決定があったことを知った日の翌日から起算して3月以内に、審査請求をすることができます」との教示があった。