2025年10月21日火曜日

BJアーカイブ・2020年7月19日・丸亀市マルタス後編・丸亀市、議員の意向でCCC誘致か?

 

こんにちは、日向です。


昨日アップしました2020年7月にリリースしました丸亀市マルタスBJ記事・前編につづいて、本日は、その後編を転載しておきたいと思います(すでにBJサイトでは消えています)。


2017年11月の和歌山市を最後に、公共施設運営の受託から遠ざかっていたCCCが2年半ぶりに受託したのが丸亀市の市民センター・マルタスでした。2013年に武雄市で話題になった初のツタヤ図書館をみた首長たちが、「ぜひ、こういうのをわが町にもつくってほしい」と殺到し、CCC前には黙っていても行列ができるほどツタヤ人気でしたが、2015年にオープンした海老名市で次々と不祥事が発覚したのを契機に、その“素人ぶり”があかるみに出ると、今度は各地で市民のツタヤ図書館反対運動が勃発。すでに内定していた愛知県小牧市では、住民投票の結果、CCCによるツタヤ図書館計画を全面的に見直すことになったのはまだ記憶に新しいところです。


そんな状況のなかで、CCCは独自の開拓方法を編み出します。すなわち、各地の自治体の首長や議会の有力者との関係を新たに構築する一方、新しく施設を整備する自治体では、その運営者を募集する前の開業準備における支援業務の段階から深く入り込むことで、いつのまにかスンナリ指定管理者に選定される、現在とっているような手法を次第に確立していきます。その手口の詳細がはっきりとわかったのが、丸亀市マルタスでの選定ブロセスだったのです。


前編では、延岡エンクロスの館長が議会に呼ばれて単独プレゼンをするという前代未聞の癒着ぶりをみてきましたが、後編では、その受託を強力に支援した“市議会のドン”と呼ばれる人物が登場します。


タイミングの悪いことに、CCCが受託するのと前後して、市議会のドンがパワハラスキャンダルに見舞われます。副市長がドンを告発したこの事件は、全国紙でもデカデカと取り上げられることとなり、その背景には、度重なる業者への口利き疑惑などの闇がかいまみえる展開に。そして、昨年からパワハラ知事として話題を集めた兵庫県のように、丸亀市でも百条委員会が開催されて、ことの真相解明に取り組むことになりました。

その狭間に、競合ゼロでCCCが新しい市民センターの指定管理者に選定されるという茶番劇が展開されていくのでした。

それでは、丸亀市・マルタスのBJ記事・後編をどうぞ。



丸亀市の“ツタヤ公民館”、有力議員の意向でCCC誘致か…パワハラ騒動も勃発した議会




 丸亀市は6月19日、市民交流活動センターの運営者に、全国でレンタル店「TSUTAYA」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)を選定する議案を可決した。


 指定管理者の募集に応募したのはCCC一社のみだったが、すでに1年前から開業準備の支援業務をCCCが格安価格で受託していたことが判明。昨年11月、“CCC推し”の議員4人が、丸亀市と同じくCCCが運営する市民活動センター・エンクロスを視察。年末には、これから公募しようという時期なのに、CCCのみが議会の場に登壇してプレゼンするという前代未聞の出来事が起きていた。


 前回記事『CCC、公共施設運営を受託する“巧妙すぎる”手口…丸亀市の管理受託の不可解な経緯』では、そんなCCC選定に至るまでのプロセスに見られた不可解な出来事をレポートしたが、今回はさらに詳しく、公共施設における民間委託の実態に迫ってみたい。


 丸亀市の事例で興味深いのは、宮崎県延岡市が2018年4月に開設した駅前型複合施設「エンクロス」との共通点が多いことである。エンクロスは、CCCが初めて図書館ではない複合施設の運営を受託したケースだ。


 かつてツタヤ図書館の第1号として脚光を浴びた佐賀県武雄市図書館の運営方法、たとえば高層書架、Tカード導入、書店方式の独自分類などは、その後にCCCが受託した自治体でも、ことごとく踏襲された。「武雄市ではこうでした」とCCCが言えば、誘致自治体は前例のない大胆な施策もスンナリ受け入れた。それと同じく、第2の“ツタヤ公民館”となる丸亀市では、延岡エンクロスの事例を完全にコピーしようとしているようにみえる。


 たとえば、年間の指定管理料は両市共に約1億3000万円。年間の来館目標者数も70万人で、まったく同じ。丸亀市は、延岡エンクロスを“CCC運営の成功事例”としてとらえて、賑わい創出や市民活動の活性化などを期待しているという。


延岡市のCCCに委託するまでの不透明すぎる経緯

 しかし、お手本となったエンクロスについて地元の延岡市民に聞いてみたところ、CCCの宣伝文句とは掛け離れた実態が浮かび上がってきた。

「エンクロスは、年間120万人来館していると派手に報道されていますが、地元市民でそれを真に受けている人はあまりいませんよ。館内8カ所にカメラが設置されていて、それでカウントしているらしいのですが、同じ人がカメラの前を通るたびに何度もカウントされていたら、どうやって実人数を把握するんですかね。エンクロスは駅前にありますが、普段は高校生が集っているだけでガラガラ。1日平均4000人来ていることになっていますが、それはありえないです。

 延岡の駅前再整備には、何年も前から地元市民が参加したプロジェクトが進んでいて、構想も設計もほぼできていましたが、そこに突然CCCが入り込んできて、前市長が独断でCCCを施設の指定管理者にしたんです」(延岡市民)

 驚くことにエンクロスに関して、開館直前までCCCに対して払う指定管理料がいくらなのか、議会にすら知らされなかったという。委託する費用もわからず、事業者が決定されていたのだ。その事実が判明したのは、市長が代わってからだった。

 18年2月、CCC誘致を決めた前市長が退任。それに伴う市長選挙では、保革相乗りで圧勝と予想されていた県庁の元幹部を、新人で元総務省官僚の読谷山洋司氏が567票差で破って当選した。当時の状況を前出の延岡市民は、こう解説する。


「読谷山さんは当選直後、エンクロスの指定管理料1億3500万円は、適正かどうかわからないので、4月の開館を当面延期して検証すると明言しましたが、それに議会が猛反発しました。市長の提出議案にことごとく反対したため、仕方なく予定通り4月開館することになったんです」

 市民の多数票を獲得して当選した市長でさえ、議会の多数派勢力に抗えない状況だったという。市長vs.議会最大派という構図は、丸亀市でも似たような出来事が起きていた。

丸亀市議会でのパワハラを副市長が告発


 今年2月、丸亀市で“市議会のドン”と目される保守系の有力議員・国方功夫氏が市の職員にパワハラや不当要求を行っているとして、徳田善紀副市長が市議会に告発書を提出した。

 地元メディアの報道によれば、豪雨で崩れた丸亀城の石垣復旧にかかわった市幹部に「とばすぞ」と怒鳴ったり、議員報酬の引き上げに努力してないとして「お前は最低の人間だ。不信任決議で副市長を続けられないようにしてやる」などと面前で言われたという。

 これに対して国方議員は「パワハラや不当要求はしていない」とし、「声の高さや態度が大きいとみられた部分もなきにしもあらず」と、反省の弁を述べたと伝えられている。

 徳田副市長が議長に告発文を提出した結果、現在、議会に設置された調査権を持つ百条委員会で証人尋問が行われるなどして、真相を究明すべく、事実関係についての審理が今も進められている。

 全国ニュースでも報じられた丸亀市のパワハラ事件の背景には、市議会において、もともと一部の有力議員が市長よりも強い権限を保持し、さまざまなことがその権限の下で強引に進められている歪な構造があるのではないかと、ある関係者は指摘する。

「副市長の告発は、これまでの経緯からすれば、ほんの一部なんですよ。もともと一部議員が特定の業者と不適切な関係にあるのではないかと噂されてきたなかで、少なくとも事実関係がはっきりした国方氏のパワハラの問題を取り上げることで、なんとか市政を正常化したいという人たちの動きなんだと思います」

 この関係者は、今回のパワハラ事件と、数年前に起きた別のある事件が底流でつながっているのではないかと分析する。

 丸亀市議会では14年4月、当時市議会議長を務めていた国方氏に不信任動議が提出されるという前代未聞の事件が起きている。


 きっかけは、市議会議長職をめぐる混乱だった。当時、市議会議長職は、任期1年の持ち回りの慣例が敷かれていたのに、この年に限って、議長は自ら退任しなかった。それに怒った他の議員たちから、4月の臨時議会で議長の不信任動議を出されて可決。それでも国方氏が辞めなかったため、6月の定例会は欠席する議員が続出して開催できなくなってしまったという。

 前出の関係者がこう続ける。

「議長としては、まさか不信任案が通るとは思っていなかったのでしょう。そのまま放っておいても動議は過半数に届かず、議長職を継続できると思っていたのではないでしょうか。ところが、ちょうどそのタイミングで地元の瓦版というか、わりと大胆なこと書くメディアが、議長が特定業者と癒着していることを示すスキャンダルを報じたんです。それで不信任に賛成する議員が増えて、もくろみが崩れてしまったということだと思います」

 結局、国方氏は「6月議会の流会の責任をとる」との名目で8月に議長を辞任したが、地元瓦版が報じた醜聞については、他のメディアは一切取り上げず、完全に沈黙したまま終わったという。

 丸亀市では、そうした一部有力議員が市長よりも絶大な影響力を持っている状況に対して、市政をもっと透明化したいと考える人たちが少なからずいた。今回の副市長のパワハラ告発も、その文脈からみれば、6年前の事件とも底流でつながっているというのは、あながちうがった見方ともいえないだろう。


一部の有力議員がCCC誘致を推進

 さて、ちょうどパワハラ告発直後のタイミングで出てきた、市民交流活動センターの指定管理者にCCCを選定した経緯は、ますます不可解に思える。

 極端に安い価格で開業準備の支援業務をCCCに委託していたことをはじめ、一部の有力議員が主導したCCC管理の延岡エンクロス視察から、年末のCCCのみを呼んだ議会プレゼンに至る経緯は、果たして本当に公平公正な選定といえるのか、大いに疑問が残るところである。

 13年に武雄市から始まったツタヤ図書館の増殖は、市長のトップダウンで進められた印象が強いが、18年の延岡から始まったツタヤ公民館のケースは、市長の独断ではなく議会の有力者によって進められる新たな民間委託の形ともいえる。

 丸亀市の関係者は、こう解説する。

「今の市長は、さすがに図書館もCCCの指定管理にすることは受け入れないと思いますが、議会では、市長に反対する会派が強い“ねじれ”が起きているので、その人たちの承認がなければ予算を通すこともできない状態が続いています。そんななか、なんらかの譲歩が必要な場面も出てくるかもしれません」

 公共施設の民間委託が進めば進むほど、民間事業者と政治家との癒着が疑われる場面はますます増えてくるだろう。市民が普段から市政を注意深く監視していないと、特定の事業者が優遇される不適切な事案は後を絶たないだろう。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)




2025年10月20日月曜日

BJアーカイブ・2020年7月12日・丸亀市マルタス前編・CCC、公共施設運営受託の手口とは ?

 

こんにちは、日向です。


さきほどアップした坂出市情報公開についての記事のなかで、お隣の丸亀市マルタスをCCCが受託した際の拙稿を引用しようと思ったら、例によってすでにBJサイトから消えていました。


こういう記事がなくなるとなにかと不便ですので、BJアーカイブとして以下に再録しておきたいと思います。


2020年7月にリリースされた記事で、前編と後編に分かれています。今回はその前編を復活させておきます。


2017年11月末に、和歌山市で駅前移転する新図書館の指定管理に選定されて以来、新規受託が途絶えていたCCCでしたが、2年半ぶりの受託が丸亀市でした。それも図書館ではなく、宮崎県延岡市に次ぐ2例目の市民センターを受託したのですから、当時は「えっ、どうして?」という驚きでした。


当時のCCCには、市民センター運営の実績などまったくありませんでしたが、2018年に延岡市でエンクロスという駅ビルの中に新設した市民交流スペースに、貸出をしない閲覧用の図書を並べて、スターバックスと蔦屋書店を設置した施設の運営を担っていただけでしたが、そのエンクロスについて、地元の人が「ありえない数字」とまで断言する「年間120万人来館」と喧伝して実績をアピールしていたのです。


2013年の武雄市の後、海老名市、多賀城市、高梁市、周南市あたりまでは、クズ本事件など不祥事が次々発覚する前の2014年頃までに各地の市長等との密約で内定していたと思われる案件でしたが、初のコンペを勝ちぬいたとされていた和歌山市ものちにどうやら出来レースだったことがわかってきまして、そのあとの第一弾が丸亀市の受託でした。いかにして、実績もノウハウもないCCCが公共施設運営の案件に食い込んでいくのか、その疑問に最初に答えてくれたのが丸亀市でした。前置きはそれくらいにして、以下アーカイブをどうぞ。


※前回までは、タイトルを「BJアーカイブ第〇回~」という書式にしていましたが、今回はそこから5年近く飛びますので、掲載年月表示のみに変更しました)




CCC、公共施設運営を受託する“巧妙すぎる”手口…丸亀市の管理受託の不可解な経緯




 香川県丸亀市は6月19日の市議会本会議で、今秋完成予定の市民交流活動センターの運営者に、レンタル大手TSUTAYAを全国展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)を指定する議案を可決した。


「ついに四国にもツタヤ図書館ができるのか」と思って取材してみると、丸亀市の場合、図書館ではなく市民活動センターの運営であることが判明したが、この決定には関係者の戸惑いと不満の声が渦巻いていた。しかも、CCC選定のプロセスには不可解な出来事がいくつも潜んでいた。いったい、丸亀市に何が起きていたのか。民間委託の最前線をレポートする。


 今年10月以降に完成予定の丸亀市の市民交流活動センターは、市庁舎の新築に合わせて施設内に併設される複合施設の一部分。開館は2021年3月中を予定。敷地面積1万800平米のうち同センター機能は1~2階の2フロアで、最大1800平米を占める。この施設に用意されたスペースに市民が集い、カフェや図書閲覧コーナーでくつろいだり、趣味サークルやさまざまな文化活動が行われるという。


 今回、CCCが受託したのは、この公民館部分の運営だ。同社がこれまで運営を受託した公共施設7つのうち、宮崎県延岡市の「エンクロス」だけは図書館ではなく、公民館にブック&カフェを併設したような複合施設(図書を閲覧できるが貸出はしない)。丸亀市は、その延岡市に続く全国で2番目の“TSUTAYA公民館”になる。


 丸亀市が選定委員会を開催してCCCを市民交流活動センターの指定管理者に選定したのは、今年3月30日。5人の審査委員(うち3名は市職員)が全6項目について採点した結果、600点満点中408点を獲得したCCCを選定したのだが、応募したのはCCCの1社のみ。つまり、選定会議は、ただのセレモニーにすぎなかったのだ。ある関係者は、こう振り返る。


「もともと、地元の団体が運営するという話だったんですが、なぜか昨年春頃に突然、民間企業に任せるという話が出てきて、びっくりしましたね」


 取材を進めていくと、選定会議の1年前から、すでにCCCは丸亀市に深く食い込んでいたことが判明した。



CCCが指定管理受託の1年前から市の業務に関与



昨年6月、開業準備の支援業務を担当する委託事業者が公募され、この業務を受託したのがCCCだった。担当部署がこう説明する。


「市民参加のワークショップを開いたり市民アンケートを行って市民のニーズを把握し、運営計画に生かす業務です。公募には2社が応募いただきまして、価格だけでなく提案内容も含めて評価するプロポーザル方式で審査した結果、CCCさんを選定しました。CCCさんは、公募する少し前に営業の方からお問い合わせがありまして、あとから責任者の方(高橋聡カンパニー長)ともお話ししました」



 このときに市が設定した委託金額の「上限価格」は350万円。2社が競合したが、この時にCCCがつけたのは、上限価格に極めて近い348万4800円だった。先の関係者が、こう述懐する。

「ある議員さんが『天下のツタヤさんが350万円で、ようきたなぁ』と、CCCの社員に聞いたら、『いや、350では絶対に赤字ですよ。延岡から宿泊費と旅費だけでも、それくらいかかりますから』と答えたそうです。じゃったら、何狙っとんの?という話ですよね」

 ちなみに、先月ツタヤ図書館を開業した和歌山市が、市民参加のワークショップを開催したり市民アンケートを行う支援業務の委託者を2015年に公募したときの委託金額は、丸亀市の約3倍に当たる約1000万円。それでも当時、「安い」と言われたことからすれば、丸亀市が設定した350万円が、いかに破格だったかがわかる。350万円の上限価格を定めた根拠について、丸亀市の担当部署は、こう回答した。

「根拠となる見積もりをとっていたのか、調べてみましたがありませんでした。当時の予算の関係で、『このくらいしか出せない』ということで決まったと記憶しています」

 つまりCCCは、指定管理者として選定される1年前に、同業他社は見向きもしない低条件で設定された開業準備事業を、あえて受託。その実績によって、コンペなしで“本命”の指定管理の仕事を取ったかのようにみえる。

 さらに驚くのが、CCCが選定された時期である。同社の基幹事業である子会社のTSUTAYAが、消費者庁から景品表示法違反で1億円の課徴金納付命令を下されたのは、昨年2月22日のことだ。TSUTAYA・TVの「定額見放題」サービスが“虚偽広告”と認定されての罰則だったが、それから3カ月しかたっていない時期に、CCCは“優れた事業者”として、丸亀市から公共施設の運営者に選定されていることになる。担当部署は、こうしたCCCの不祥事について、「まったく知らなかった」というから不思議だ。


公募前にCCCが議会でプレゼンを行う異常事態


ある関係者は、CCCの選定プロセスについて、こう打ち明ける。

「最終的には11月に、CCCが運営する延岡のエンクロスを視察に行った有力議員がべた褒めしており、それで流れが決まったような感じでしたね」

 最後の舞台は、年末も押し迫った12月19日の議会だった。“CCC推し議員”がセッティングして、本会議が終了した後に全員協議会を開催。その場に、なんとCCC社員で延岡エンクロスの中林奨館長が、全議員の前でプレゼンテーションをしたというのだ。


 まだ指定管理者の公募すらしていない段階で、一民間事業者が議会の場で堂々と営業活動するというのは、異例の出来事。前出の関係者は、こう批判する。


「優れた運営事例を紹介するにしても、市の職員が行うのならいいんですよ。ところが、事業者が出てきて議会で直接プレゼンなんかしたらアウトですよ。もちろん、批判した議員もいましたが、まったく聞き入れられなかったみたいですね」


 CCCだけが事前に議会プレゼンを許されたとしたら、後から指定管理者が広く公募されて行われた選定委員会での審査など、ただの茶番でしかない。事前に、そうした内実を他社が察知していたとしたら、わざわざプロポーザルを書いて応募してこないのは、当然といえるだろう。前出の関係者は、こう嘆く。


「指定管理料は年間、1億3000万円です。人件費からこの金額を算出したらしいのですが、丸亀は、延岡のように駅前施設ではありませんので、賑わい創出を目的としていないのに、なぜそんなにかかるのでしょうか。ただ部屋を貸し出すだけで、CCCに市民活動中間支援のノウハウなんて本当にあるんですか」


 さらに、裏で一部の議員がCCCと癒着して指定管理者にしたのではないかと批判する。そこで、“CCC推しの有力議員のひとり”と名指しされた公明党の内田俊英・前市議会議長を直撃したところ、こう説明があった。


「同僚議員に誘われて、昨年11月に延岡を視察したのは事実です。実際に出かけてみると、市民の自主的な活動が活発に行われているのを目にしまして、このすばらしさを、みなさんにわかっていただこうと思い、CCCさんを市議会にお呼びした次第です。ご批判も受けましたが、わかっていただけましたので、今は呼んでよかったと思っています」


 CCCが公共施設を丸ごと運営するケースは、2013年の佐賀県武雄市を皮切りに全国7つの自治体で誕生している。


 武雄市では、ツタヤ図書館を運営し始めた初年度に年間90万人の来館者を集め、「官民連携の成功モデル」と称賛の嵐だったが、15年に系列の古書店から大量の古本を仕入れていたことが発覚したのをきっかけに、以後の評価はダダ下がり。わかりにくい独自分類や、高層書架に飾るダミー本の費用、利用カードとTカードの連携による個人情報に関する不安など、その杜撰な運営実態が次第に明らかになり、進出予定の自治体では次々と市民の反対運動が勃発。


 そのためか、2017年12月の和歌山市を最後に、同社を公共施設運営の委託先として選定する自治体は途絶えていた。そんななか、3年ぶりに同社に運営を委託したのが丸亀市だった。


 だが、丸亀市民の間には、駅前に美術館併設で運営している市立中央図書館の先行きまで心配する声が上がっている。


「今のところ中央図書館は市が直接運営していますが、指定管理にしろという議員の声が次第に大きくなっているので、『ついでにCCCに図書館も任せろ』という話になりかねないですよね」


 全国的にも珍しい、美術館を併設したアート建築の丸亀市立中央図書館が、もしCCC運営になるとしたら、7年前の武雄市から始まった、観光客が押し寄せる“見世物図書館”がまた現れることになるのだろうか。

(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)




坂出市の情報公開はどうなっていてるのか?

 

こんにちは、日向です。


前回と前々回は、昨年ツタヤ図書館誘致を決めました坂出市の審査請求・弁面書に対して送付した反論書を公開しました。




 これを読まれて、自治体の情報公開って、そんなに欲しい情報が開示されない役立たずなの?と思われた方も多いと思います。


 そこで、本日は、坂出市の情報公開って、どういうふうになっているのかについて、これまでにわかったことをまとめておきたいと思います。


 まず第一、坂出市は、市内在住・在勤者の限らず、どこの誰でも情報公開請求をすることができます。いわゆる「なんびとも~」と呼ばれるフルオープンの体制です。


 ツタヤ誘致自治体のなかには、和歌山市のように市外の者からについては、任意的に受け付ける「情報開示申出」のみ自治体もあるなか、対象者に一切制限を設けていないというところは、高く評価できるのではないかと思います。「情報開示申出」の場合は、市外の者はあくまで恩恵的に情報を提供してあげているというだけなので、不服の申し立てイコール審査請求ができませんので、黒塗りされたり不開示決定が出たら、それまでです。

 しかし、よくよく調べてみると、坂出市の条例とその運用は、決して手放しで高く評価できるわけではなく、熊本県宇城市のように、よくわからないまま他市と同じような条例を制定しただけで、特別情報開示に積極的というわけではないことがわかりました。(ちなみに、宇城市は、私が2021年に審査請求をしたことがきっかけで、「なんびとも~」受け付けていた体制を「市内在住者に限定する」よう2023年に条例を改定しました)


 次に、私が真っ先に知りたかったのは、今回、坂出市の公民連係課と図書館部門がそれぞれ別々に出してきた弁明書は、誰がどのようにして書いたものなのかってことでした。

 だいたいどこの自治体でも、総務部に情報公開の担当課があって、そこの職員が情報公開の実務に関しては、条例の細かい内容も含めていちばん詳しいはずですが、彼らは開示の実務はタッチしません。 市民の情報開示請求を受けて回答するのは、どこでも担当課の職員です。

 坂出市の場合は、市長宛ては、公民連係課の職員が、教育長宛ては、大橋記念図書館(坂出市の中央図書館)の職員が担当したことが判明しました。
 
 お二人とも直接電話でお話をお聞きましましたが、情報公開条例については特に詳しいわけではなく、審査請求に至っては今回私のケースが初めてだそうです。さらに総務部の情報公開担当職員ですら、審査請求は着任以来これまで一度もないそうです。みなさん現在の部署に1~2年しかおらず、最も長い図書館部門の職員の方は3年だそうです。

 興味深いのは、坂出市でも、情報公開制度にいちばん詳しく、制度の運営を担っている総務部の担当の方が、今回の開示から弁明までについては、ほぼノータッチだったということです。情報公開条例についての知識が乏しい担当課の職員が、情報開示請求を受けて対象となる公文書を探し出してきて、これはマズイと判断した部分を黒くヌリヌリしているわけです。


開示請求しても審査請求なし?



 ということは、坂出市では、情報開示請求は、極端に少ないのかなと思ったら、そうでもなく、直近の2024年(令和6年度)には99件(全部公開54件、一部公開 43件、非公開2件)もあるんです。


・情報公開制度の運用状況について令和5年以降の実施機関別件数

(令和5年度)公開請求件数 126件
全部公開 63件
一部公開 52件
非公開 11件(うち文書不存在 10件)

(実施機関別内訳)
市長 107
教育委員会 16
監査委員 3
合計件数 126

(令和6年度)公開請求件数 99件
全部公開 54件
一部公開 43件
非公開 2件(うち文書不存在 2件)

(実施機関別内訳)
市長 85
教育委員会 15 ※2件市長と重複
農業委員会 1
合計件数 99(重複分を除く。)



 ちなみに同じ人口5万人規模の宇城市では、情報開示請求は例年20~30件くらいしかない(2018年27件、2019年34件、2020年38件、2021年34件、2022年23件)ことからすれば、坂出市の請求件数は決して少なくないといえます。

 ところが、坂出市で不服の申し立てをした審査請求となると、ガラリと様相は異なってきます。2024年度はゼロ件。なぜか2023年度だけ7件もあったほかは、例年1件あるかどうか。ほとんど審査請求をする人はいないみたいなんです。


・情報公開制度の運用状況について各年度における実施機関別・審査請求件数
(令和2年度)0件
(令和3年度)1件(市長 1件)
(令和4年度)0件
(令和5年度)7件(市長 7件)
(令和6年度)0件



 いまの中央図書館を廃止して、駅前に移転するという重大事を発表したのが昨年秋ですから、ほかの自治体なら私のように不透明な図書館廃止・移転の決定プロセスを開示請求して、それに不服申立をする市民が続出しそうな局面ですが、なぜか、坂出市では、そうした動きがまったくなかったというのが驚きです。


 お隣の香川県丸亀市では、2020年に市民活動センター・マルタスの運営者にCCCが選定された際、市民からは反対の声こそめだってあがらなかったものの、丸亀市議議会では、「CCC任せて大丈夫なのか?」という議員たちの疑念が渦巻きました。そのため執行部は、全員協議会を開催して詳細な説明会を行いました。なおかつ、CCCの責任者を議会に読んでプレゼンさせるという、こちちらは、特定企業との癒着実態があからさまになるという、これまた別の意味で前代未聞の事態が起きていますが…。


 坂出市では、なんの議論もなく情報開示請求して不服申し立てる市民もいなかったとしたら、不思議で仕方ありません。ちなみに図書館移転が決まる前の2023年度に限っては、情報公開請求が坂出市でも、126件もあり、うち7件の審査請求がありましたので、そのなかに、もしかしたら、決定前に水面下で進んでいたCCC誘致に関する請求があったのかもしれませんが、現時点では、まだそのときの審査請求の答申書が公表されていませんので、その点は確認できませんでした。

 また、昨年開示請求されて、今年に入って審査請求された方がいるのかもしれませんが、そのデータはまだ発表されていません。

ご存じの方がおられましたら、ぜひコメント欄で教えてください。

 坂出市の情報公開制度の運用状況に関しては、法律で定められている公表義務は、一応はクリアしているようですが、2022年までの実施状況しか発表されておりません。それ以降については、総務部に問いあわせるしかありません。

 今回、私のように審査請求をしてややこしいことを言い出す者が出てきたため、今後は、宇城市のように、情報開示請求ができる対象者をしない在住者に限定するように条例を改正するかもしれません。


審査会開催スケジュールは未定



 では、審査請求された事案について、専門家が情報開示の是非を審議する審査会の顔ぶれはどうでしょうか。

 これについては、検索してもまったく情報が出てきません。過年度の審査請求答申書に書かれた会長さんのお名前で検索すると、お隣り丸亀市の弁護士さんのようでしたが、それ以上のものはみつかりませんでした。


 情報公開のページでも審査会委員の名簿は公表されておりませんでしたので、総務部に問い合わせて、ようやく以下の名簿を入手することができました。


坂出市情報公開・個人情報保護審査会委員
(1)坂入  誠(弁護士)
(2)三谷 茂寿(公認会計士)
(3)三野 郁子(本市人権擁護委員)
(4)塚本 俊之(香川大学法学部教授)
(5)三野 秀行(本市行政相談委員)

筆頭にお名前があがっている弁護士の先生は、坂出市の方のようなので、最近、このメンバーに
代わったのでしょう。



 では、審査請求を受理した後、審査会の開催スケジュールはどうなっているのでしょうか。和歌山市などは、さすが県庁所在地だけあって、毎月のように審査会が開催されて、そこで次々とあがってくる審査請求についての審議が行われていますが、坂出市では、不定期開催だそうで、次回いつ開催されるかもまだ未定とのことでした。

 
 としたら、審査会の答申が出るまでには、いったいどれくらいの月日が費やされるのでしょうか。毎月開催されていた和歌山市ですら、審査会が一部開示せよとの答申を出してその通りに開示されるまでに約3年もかかっていましたので、新図書館がオープンする頃には、なんらかの結論は出ると思いますが、そうなると、情報公開制度って、いったいなんの意味があるの?と市民は受け止めるでしょう。

 ですので、あとは審査会の委員の先生方が、いかに誠実にその職責を果たされるのか、また、市民の知る権利を守る最後の砦ともいえる図書館が、自らの廃止・移転にかかわることについての情報を開示することに、どう真摯に取り組んでいかれるかを、しばらくは見守りたいと思います。


 ちなみに、2021年に初当選され、今年5月に無投票で再選された有福哲二市長は、選挙直前の5月1日、エックスに以下のような投稿をされていました。

公務終了後、市民の皆さんへ挨拶まわりを行いました。途中、坂出市立大橋図書館で子ども達に読み聞かせをしているボランティアの方に出会い、「新しい図書館を楽しみにしています」と言われ、市が進めている「坂出駅周辺再整備」に意を強くしました。市民から力をいただきました。感謝です‼️
 
 選挙間近に、図書ボラさんに「新しい図書館期待しています」と応援されているとご主張されていますが、 決定前にちゃんと市民の声を聞いてほしかったという意見は一切耳には入らなかったのでしょうか。










2025年10月17日金曜日

坂出市教委の弁明書にも反論しました

 

こんにちは、日向です。


昨日アップしました坂出市の弁明書への反論(坂出市の弁明書に反論しました)につづいて、本日は、坂出市教委の弁明書に対する反論書を公開したいと思います。


ちょっとややこしいんですが、情報開示請求というのは、その権限を持つ部局に対して行うしくみになっていて、今回、坂出市駅前に図書館も入る複合施設の建設プロジェクト全般については、管轄が市長部局ですから市長宛てに行います。

またそれとは別に、図書館という教育文化施設の運営に関しては、教育委員会が権限を持っていますから、教育長宛てに行うというわけです。


ただし、例外的に教育文化施設の権限を市長部局へ移管した自治体の場合、図書館に関することも市長宛てだけでいいということになっています。とりあえず、坂出市は、図書館の権限を市長部局に移管しておりませんので、同じ内容の情報開示請求を、市長宛てと教育長宛てに行い、それぞれの部局が保管している情報を別々に開示してくるというしくみになっています。


本日は、その教育委員会バージョンをご紹介するわけですが、最初の開示請求の内容がほぼ同じですから、どちらの部局の弁明書の内容もほぼ同じです。よって、私の反論もほぼ同じです。市教委バージョンで、若干、市長部局にはなかった部分がつけ加えられているのは、私の審査請求に「不存在決定を出してほしい」という内容が加えられているからです。


情報の開示を求めておきながら、「不存在を出せ」というのは、市教委の弁明にもある通り、論理的に矛盾するように思えますが、今回の坂出市の事業が既存の中央図書館(市立大橋記念図書館)を廃止して、駅前に移転するという図書館の存立にかかわる重要事項ですから、それについての議題を教育委員会に上程して、教育委員会として正式に廃止・移転を決定した文書がなければなりません。なので、それについての情報の開示を1アイテムとして求めていたにもかかららず、議決・決裁どころか、そのことを教育委員会内部で話し合った記録さえ開示されておりませんでしたので、そのことを明確にすめためには「図書館の廃止・移転に関する文書は不存在」という決定を出してもらわねばなりません。


教育委員会には一切はからずに、有福市長の鶴の一声で図書館の廃止・移転を決めたということであれば、今回の駅前移転プロジェクトはあきらかに手続きに瑕疵があったということになってしまいますので、「そこは頬被りしたい」というのが坂出市の事務方サイドの思惑だろうと思いますので、果たして、そんな都合のいいことが許されるのがどうかを、審査会の委員の先生方に詳しくご審議いただきたいというのが私の要望です。


というわけで、以下に市教委弁明書への反論をどうぞ

(市長宛てのご反論をすでにお読みになった方は、市長部局バージョンにはなかった市教委バージョンのテキストの色を赤にしていますので、そちらのみお読みいただければと思います)




反論

2025年10月10

  

                                     

   坂出市教育長殿

審査請求人 

      日向咲嗣    



               (連絡先 hina39@gmail.com





令和7813日付の弁明書に対して、次のとおり反論します。


(市教委弁明)






 処分庁が今回開示した文書は、各所に黒塗りがあるため、上記の「個人情報」が具体的にどの部分を指し示しているのか判然としないが、公文書に、ただ個人の氏名が記載されているというだけでは、そのすべてが当該条例における「個人情報」として「非公開情報」にあたるわけではない。

 審査請求人は「ボランティア意見交換会」参加者氏名の開示など求めていないが、当該事業にかかわる行政サイドの人物の肩書・氏名は当然開示されるべき(公務員等の職及び職務の遂行に関する情報は不開示情報から除外されている)で「非開示情報」にはあたらないのは、自治体の情報公開に関係している者にとっては、「イロハのイ」である。また、当該事業の公募に参加した民間企業サイドに関しても、提案書等に記載されている業務を統括する(予定)の責任者については、秘匿されるべき「個人情報」にはあたらないのも、これまでの判例であきらかになっている。ゆえに、それらは、黒塗りせずに開示されるべきである。


(市教委弁明)




 処分庁は、開示した公文書のなかから、いわゆる「企業秘密」にあたる部分を抜き出して「非開示情報」としたと解されるが、具体的にどの部分が、どのような理由で「企業秘密にあたる」かは、一言も説明しておらず、理由は依然として不明なままである。

 改めていうまでもないことだが、単に、法人の事業に関する情報が記載されているだけでは、それが無条件に「企業秘密にあたる」わけではない。判例では、「ただ漠然と競走上の利益が損なわれる恐れがある」というだけでは非開示対象になる「企業秘密」とはいえず、個別の記載事項について、詳細に検討した結果、その情報を公開することによって、あきらかに当該企業の利益が損なわれると判定される箇所のみ「非開示情報」と認められている。


 長年、総務省で公共経営にかかわった後、東京都中野区や神奈川県平塚市等で情報公開審査会の委員(平塚市では会長)を務めている神奈川大学法学部の幸田雅治教授は、「企業秘密」について以下のような見解を示している

「競争上の利益というのは、本来、その企業が持つ独自のノウハウであり、ほかの企業にはマネのできない特殊なもののはず。それと認められる部分は、もちろん黒塗りするのはやむをえない。しかし、多くの場合、そういう独自の技術・ノウハウとはいえないものを、ただ漠然と『競争上の地位に影響がある』としていたりしますで、私が出ている審査会では、本当に企業秘密と言えるものなのかどうかをひとつひとつよく検討したうえで、そうでない場合は、全面開示すべきとの答申を出すことになります」 (日向咲嗣著『黒塗り公文書の闇を暴く』朝日新聞出版93ページ)


 坂出市情報公開審査会には、坂出市の公民連携課が非開示とした部分の法人情報について「企業秘密にあたる」とした理由を聴取し、場合によっては、その情報の当事者である企業にも聴取したうえで、どれが「法人の事業活動の自由や競争上の地位の保護を目的として、ノウハウに関する 情報や法人の事業活動が損なわれると認められる情報」にあたるかを精査していただきたい。


(市教委弁明)



 上記で指摘されている、いわゆる「審議、検討等情報」が非公開となるかどうかは、以下の要素を考慮して個別具体的に判断されるものである。

(1)単に自由な意見交換が損なわれる可能性があるだけでなく、それが公共の利益と比較して看過できないほど不当であるかどうか


(2)単なる客観的な調査データなどは非開示に該当しない


(3)時間が経過して最終的な意思決定がなされた後については、「自由かつ率直な意見交換を確保するために必要」とは認められない


 坂出駅前に新しい図書館を建設する当該事業の計画はすでに決定されており、いまさら担当事業者の選定プロセスの情報が公開されたからといって、自由かつ率直な意見交換を確保しにくくなることは考えにくい。逆に、プロセス情報を秘匿することで、市民にいらぬ誤解を与えかねない。


(市教委弁明)




 「他市が行なう事務または事業に関する情報」「使用料などの契約内容」がなにゆえ「事務または事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」というのも、意味不明である。

 坂出市の実務者たちがカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)等、民間企業運営の公共施設を視察した際に説明された指定管理料等の運営費に関する情報は、メディアでも報道されているのはもちろん、各地の視察団が作成した復命書等においてCCCから説明された内容として、多数ネット上に公開されている(私的な慰安旅行ではなく、貴重な税金を費やして得た調査結果は市民に開示されるのは当然)

 それらの情報はすでに「公開情報」として扱われるべきものであり、条例に定められた例外的な非開示情報にはあたらないのは、改めて指摘するまでもないことである。

 そもそも運営費の金額やスタッフの人数等については、これから新しい図書館を整備するにあたって貴重な参考情報であることから、このような基本的な情報を非開示にしていたのでは、なんのために職員が多額の公費を使って各地を視察したのかと市民は怒りを覚えるだろう。

 それでもなお、非開示にすべきと市教委サイドが主張されるのならば、審査会は、企業秘密同様に、上記に、該当する情報が開示されることで具体的にどのような支障が生じる可能性があるのかを関係者に聴取したうえで、ご審査いただきたい。



(市教委弁明)





 企業が自治体に提出した文書は、本来、すべて開示されるべきものである。「公にしないとの条件で任意に提出された」とは、当該企業と坂出市教委の間で、事前にどのような協議・約束がなされたのだろうか。

 通常の公募型プロポーザル等のコンペにおいて「公にしない」という約束を自治体が当該企業と交わすことは、はなはだ不適切である。公務委託業者の募集要項には「応募にあたって、市に提出された文書はすべて公開する」旨が記載されていて、そのことを承知のうえで事業者は応募してくるのが一般的である。

 坂出市においては、なにゆえ、市教委がその原則を捨てているのだろうか。本当に、当該企業と坂出市教委はそのような密約をしたのか。もししたであれば、不都合な情報はなんでもかんでも「公にしないとの条件で任意に提出された」ものとして非開示にできてしまう。結果、例外規定の抜け穴を飛躍的に広げることととなり、「公にしない」との約束そのものが情報公開条例の精神を踏みにじるものになってしまうと言わざるをえない。

 よって、坂出市教委が当該企業とそのような約束をしたのかどうかを審査会は詳しく調査すべきであり、もし、そのような約束を市教委が勝手にしたのならば、その情報を公にすることによって、具体的にどのような不利益を当該企業が被る可能性があるのかを情報公開条例の趣旨にのっとって、詳細に検討していただきたい。

 なお、前出の神奈川大学法学部の幸田雅治教授は、この点について以下のような見解を示している。


「あらかじめ公開しないことを前提に任意で提出された文書なので、開示できないというケースもよくありますが、そういう論理が通用するのは、航空機や列車の事故で編成される調査委員会だけです。関係者個人の刑事責任を追及すると事故原因がわからなくなるため、原因調査を目的としておおやけにしないという前提で調査が行われます。しかし、一般的な公文書においては、そういう約束そのものが不適切であり、そのような約束をしていたとしても、開示すべきものは開示しなければなりません」 (日向咲嗣著『黒塗り公文書の闇を暴く』朝日新聞出版102ページ))


(市教委弁明)





 これまで述べてきた通り、坂出市教委は、情報公開の例外規定を拡大解釈して、むやみに公文書を黒塗りしている。「非公開情報の妥当性」は、どこにもみあたらない。



(市教委弁明)





 公募型プロポーザルの選定の概要は、確かに、坂出市のサイトに掲載されているようだが、それは、あくまでも市長部局による開示である。

 図書館という教育委員会が管掌する教育文化施設については、教育委員会独自の検討プロセスがなければならず、坂出市が図書館の管轄を市長部局に移管していない以上、教育委員会独自に、駅前への図書館移転についての是非や、移転するのであればどのような図書館にすべきか等を、市民や教育委員会傘下の図書館審議会での有識者の意見を詳細に聞いたうえで検討し、具体的な内容を決定していなければならない。

 審査請求人は、そのような情報があるはずと教育委員会に情報開示請求をしたのである。にもかかわらず、事業者の選定についての情報を市のホームページで公表していることで、審査請求人の要求に充分に答えているとする市教委のこの回答は、はなはだ不誠実だと言わざるを得ない。


(市教委弁明)





 しつこいようだが、審査請求人は、坂出市教委に求めているのは、新図書館について、教育委員会独自の検討プロセスがわかる書面である。

 坂出市が図書館の管轄を市長部局に移管していない以上、図書館という教育委員会が管掌する教育文化施設については、教育委員会独自の検討プロセスがなければならず、教育委員会が市長部局から独立して、駅前への図書館移転についての是非や、移転するのであればどのような図書館にすべきかを、市民や教育委員会傘下の図書館審議会での有識者の意見を詳細に聞いたうえで検討し、具体的な計画を決定していなければならない。

 しかるに、坂出市教委は、各自治体への視察に関する記録のほか、図書館協議会等、教育委員会内でふだん行なわれている定例会等の文書のみを開示しただけで、新図書館移転に関して内部で議論したことがわかる書面は一枚もみあたらない。

 その決定プロセスが何もないのに、突然決定した、駅前移転する新図書館に関するパンフレットのような書面が添付されているのみである。



 審査請求人は、市教委委がどのような文書を作成保管しているのかわからないため、決定プロセスに関して、他市への視察記録等、いくつか例示するなど、とりあえず保管しているものをすべて出してほしいとお願いしたものである。

 それによって開示された文書の中には、審査請求人が求めている市教委独自に検討・決定したことがわかる文書を仮に「A」とするならば、市教委の開示は「BC」「A」「D」といったふうに、当然「A」が含まれているものと期待していた。

 しかるに、市教委が今回開示した文書は、「BCD」と、最も核心部分にあたる「A」がひとつも含まれていなかった。

 「A」を出してくださいとお願いしているのに、「BCD」を出してきて「適法かつ適正である」と開き直られては、返す言葉がない。

 「A」については作成保管していないのならば、その点を明確にすべきである。審査請求人が求めている「市教委が、新図書館移転を決裁した文書は不存在」と明確に回答すべきである。雑多な関連情報のみ開示して、目くらましをするような行為は、市長から独立して教育行政をつかさどるという教育委員会に課せられた責任と役割を意図的に放棄しているに等しい。

 

 何度も繰り返すが、坂出市が図書館の管轄を市長部局に移管していない以上、図書館という教育委員会が所管する教育文化施設については、教育委員会独自の検討プロセスがなければならず、教育委員会が市長部局から独立して、駅前への図書館移転についての是非や、移転するのであればどのような図書館にすべきかを、市民や教育委員会傘下の図書館審議会での有識者の意見を詳細に聞いたうえで検討し、具体的な計画を決定していなければならない。

 教育委員会決裁のプロセスを経ていないということならば、坂出市の新図書館建設は、適正な手続きを経ていない行為といわざるをえず、もし今後、それに関して住民訴訟が提起された場合には、最悪、新図書館建設は違法との判決を下される可能性すらある。

 それほど重要なことだけに、審査会の先生方には、市教委の情報公開について、審査請求人が求めている情報を開示していないことを正しく認定していただきたい。

 このようなめくらまし行為が許されるのであれば、市民の情報公開制度に対する信頼は地に落ちるといわざるをえない。



 なお、CCCを公共施設の運営者に選定した自治体においては、本件と同様の行政が出した黒塗り公文書について審査請求人をはじめとした市民から度重なる審査請求が行なわれており、それらの自治体においては、情報公開審査会が詳細に検討した結果「開示すべき」との答申が出されていることも付記しておく。

 たとえば、審査請求人が20216月に熊本県宇城市に行なった審査請求では、審査請求の手続きを行なったとたん実施機関は、審査会の答申を待たずして、CCCと競合した企業名の黒塗りを一部外した文書を開示し、また審査会の答申後には、黒塗りされていた選定委員に関する情報の大半が開示された。

 2017年にCCCを図書館の指定管理者に選定した和歌山市では、地元市民が翌年3月、黒塗りだらけの開示に対して審査請求を行ない、それまでほぼ全面黒塗り状態で開示されたCCC及び同社と競合したTRC図書館流通センターによる提案書について、その約8割の黒塗りがはずされた文書が開示されている。

 さらには、坂出市のお隣りにある丸亀市でも、20228月、CCCが運営するマルタスの運営費の内訳が「企業の競争上の利益を損なう」ことを理由にすべて黒塗りだったのが、情報公開審査会で審議された結果「すべて開示すべき」との答申が出され、運営費の詳細な内訳が市民に対して開示されることとなった。

 坂出市でも、情報公開審査会の委員の先生方には、必ずや、公正公平で賢明なご審議をしていただけるものと期待しております。









2025年10月16日木曜日

坂出市の弁明書に反論しました

 

こんにちは、日向です。


本日は、坂出市の情報開示請求についての続報です。


JR坂出駅前にツタヤ図書館を核とした複合施設を建設する件で1月に開示された情報に、一部不開示となっている部分についてもすべて開示してほしいという主旨で、不服を申し立てる審査請求を6月に行いました。


 
 それについて、担当課から「弁明書」というのが7月に送られてきておりまして、この内容に反論があるのなら、9月末日までに「反論書」を提出せよということでしたので、なんとか反論書を期日までに作成して総務部の情報公開担当課に送りました。

 本日は、その反論書を公開しておきたいと思います。

 詳しくは、この文末をお読みいただくとして、簡単に坂出市の弁明書についての感想を述べておきたいと思います。


 坂出市の市長部局が「非開示」とした理由としては、

・個人情報
・企業秘密
・「審議、検討等情報

―――の三点が主なもので、黒塗り公文書を出してくるときの定番理由といってもいいものばかりでした。
 
 個人情報だから出せない、企業秘密にあたるから出せない、率直な意見交換をしにくくなるから出せない――は、毎度毎度、その理由をコピベするだけで「不開示理由」にもなるし、審査請求された際の「弁明」にもなるというわけです。

 こう言ったら失礼かもしれませんが、この手の書面作成には、エーアイは必要ありません。この三つの文面をコピペするだけで必要事項がかけてしまう、誰でもできるお仕事です。

 開示決定に書かれた「不開示理由」には、具体的にどの部分がどの理由にあたるかの説明すらありませんでした。

 なので、反論するほうも、個別箇所を指定せず、弁明書にざっくりと反論できますので、わりとラクです。

 あとは、ざっとみていただければわかるように、そもそも担当課には、市民に新しい図書館を建設する事業を決めたプロセスを詳しく説明して、自分たちが決めた計画に対して理解を求めるつもりなど、微塵もないようです。

 なにを聞いても、ただ「今後も適切に進めて参ります」を延々と繰り返す、壊れたロボットを相手にしているような、いつものツタヤ自治体の“ディスコミュニケーション”を味わわせてくれます。

 では、反論文をどうぞ。




反論

2025930

  

                                     

   坂出市長殿

審査請求人 

      日向咲嗣    



               (連絡先 hina39@gmail.com





令和7813日付の弁明書に対して、次のとおり反論します。









 処分庁が今回開示した文書は、全面黒塗ページが多数あるため、上記の「個人情報」がどの部分を指し示しているのか判然としないが、公文書に、ただ個人の氏名が記載されているというだけでは、そのすべてが当該条例における「個人情報」として「非公開情報」にあたるわけではない。

 審査請求人は「市が開催したワークショップ等の参加者名」の開示など求めていないが、当該事業にかかわる行政サイドの人物の肩書・氏名は当然開示されるべき(公務員等の職及び職務の遂行に関する情報は不開示情報から除外されている)で「非開示情報」にはあたらないのは、自治体の情報公開に関係している者にとっては、「イロハのイ」である。また、当該事業の公募に参加した民間企業サイドに関しても、提案書等に記載されている業務を統括する(予定)の責任者については、秘匿されるべき「個人情報」にはあたらないのも、これまでの判例であきらかになっている。ゆえに、それらは、黒塗りせずに開示されるべきである。






 処分庁は、開示した公文書のなかから、いわゆる「企業秘密」にあたる部分を抜き出して「非開示情報」としたと解されるが、具体的にどの部分が、どのような理由で「企業秘密にあたる」かは、一言も説明しておらず、理由は依然として不明なままである。

 改めていうまでもないことだが、単に、法人の事業に関する情報が記載されているだけでは、それが無条件に「企業秘密にあたる」わけではない。判例では、「ただ漠然と競走上の利益が損なわれる恐れがある」というだけでは「企業秘密」とはいえず、個別の記載事項について、詳細に検討した結果、その情報を公開することによって、あきらかに当該企業の利益が損なわれると判定される箇所のみ「非開示情報」と認められている。


 長年、総務省で公共経営にかかわった後、東京都中野区や神奈川県平塚市等で情報公開審査会の委員を務めている神奈川大学法学部の幸田雅治教授は、「企業秘密」について以下のような見解を示している。



「競争上の利益というのは、本来、その企業が持つ独自のノウハウであり、ほかの企業にはマネのできない特殊なもののはず。それと認められる部分は、もちろん黒塗りするのはやむをえない。しかし、多くの場合、そういう独自の技術・ノウハウとはいえないものを、ただ漠然と『競争上の地位に影響がある』としていたりしますで、私が出ている審査会では、本当に企業秘密と言えるものなのかどうかをひとつひとつよく検討したうえで、そうでない場合は、全面開示すべきとの答申を出すことになります」 (日向咲嗣著『黒塗り公文書の闇を暴く』朝日新聞出版93ページ)


 坂出市情報公開審査会には、坂出市の公民連携課が非開示とした部分の法人情報について「企業秘密にあたる」とした理由を聴取し、場合によっては、その情報の当事者である企業にも聴取したうえで、どれが「法人の事業活動の自由や競争上の地位の保護を目的として、ノウハウに関する 情報や法人の事業活動が損なわれると認められる情報」にあたるかを精査していただきたい。

 法人の担当者の氏名については前述した通りである。




 上記で指摘されている、いわゆる「審議、検討等情報」が非公開となるかどうかは、以下の要素を考慮して個別具体的に判断されるものである。

(1)単に自由な意見交換が損なわれる可能性があるだけでなく、それが公共の利益と比較して看過できないほど不当であるかどうか


(2)単なる客観的な調査データなどは非開示に該当しない


(3)時間が経過して最終的な意思決定がなされた後については、「自由かつ率直な意見交換を確保するために必要」とは認められない


 坂出駅前に新しい図書館を建設する当該事業の計画はすでに決定されており、いまさら担当事業者の選定プロセスの情報が公開されたからといって、自由かつ率直な意見交換を確保しにくくなることは考えにくい。逆に、プロセス情報を秘匿することで、市民にいらぬ誤解を与えかねない。





 「加点の内訳や計算方法」が、何を意味するものか、いまひとつ判然としないが、もしこれらが当該事業者の選定にかかわる評価だとしたら、その採点方法についての情報がなにゆえ「非開示情報」にあたるのかが不明である。むしろ公正な審査が行なわれたことを示すためには、その採点方針に関する情報こそ包み隠さず開示されるべきである。

 また「他の地方公共団体の費用に関する情報が(非開示情報に?)該当し」というのも、意味不明である。

 坂出市の実務者たちがカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)運営の公共施設を視察した際に説明された指定管理料等の運営費に関する情報は、メディアでも報道されているのはもちろん、各地の視察団が作成した復命書等においてCCCから説明された内容として、多数ネット上に公開されている。

 それらの情報はすでに「公開情報」として扱われるべきものであり、条例に定められた例外的な非開示情報にはあたらないのは、改めて指摘するまでもないことである。







 各応募者に対する評価や企画提案概要が市のホームページで公開されているのだとしたら、「こちらを参照されたし」として、そのページのリンクを示すか、または、そのコピーを開示文書にも含めるべき(開示しているとしたら、開示文書名とページ番号を記載するべき)と思うが、なにゆえ、そうされないで、ここに「申し添える」とされているのか理解に苦しむ。坂出市の公民連係課は、市民に行政の施策に対する理解を求めようとする意識が極めて希薄か、その努力を著しく怠っているのではないのかと思わざるをえない。


 また、落選した各事業者名が開示されていないことことも、審査請求人にとっては、大きな不満である。もし、落選したことが世間に知られることでその企業が不利益を被る可能性があるという理由(これも企業の競走上の利益を損なうから?)によって非開示にされたのであれば、それも間違いである。前出の幸田教授は、以下のように述べている。


「不採用になったことが知られると、否定的な評価があったと噂されてデメリット生じるという理由で、落選企業の提案書が非開示になることが多いですが、ちゃんと検討すれば、ほとんどの場合、そういう論理は成り立ちません。なぜかというと、応募があった複数の事業者をどのように比較して選んだかを判断するためには、選定された事業者の提案だけでなく、落選した事業者の提案も公開しなければ判断できないというのがまずひとつ。もうひとつは、落選したという事実が公表されたからといって、そのことが具体的な損害に結び付くという証明は、そう簡単にはできないからです。

 具体的にどのような不利益が生じるのかということが示されないといけないのですが、ほとんどのケースではそれは証明できないのです。審査会まで行けば、こんな理由は成り立たない。少なくとも、私が手がけた自治体の審査会では、そのような非開示理由を認めたことはありません」(日向咲嗣著『黒塗り公文書の闇を暴く』朝日新聞出版9293ページ)








 当該事業は、「図書館建設に限定したものではない」とはいえ、地元メディアで「レンタル大手「TSUTAYA」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブが運営する図書館を核とする」(202496日付 朝日新聞デジタル) と派手に報じられことからもわかるように、ツタヤ図書館がコアになっている事業である。

 そして、CCCによる図書館建物の設計や運営についての提案が評価された以上(選定されたコンソーシアムのなかで図書館の実績があるのはCCCのみ)、そのことについて同社がこれまで各地で起こした不祥事等の悪評をまったくなかったこととして、坂出市の選定委員会が評価したことは、2013年の武雄市以来これまでの経緯を知るものにとっては、強い違和感を覚えるのは当然のことである。

 そのような審査請求人の疑念を公民連係課の職員が「妥当性を欠いている」ととらえているとしたら、それはおそらくCCCが自ら発信している広告宣伝要素の強い一方的な情報のみに偏った情報受信をしているためと思われる。そこで、2021年に熊本県宇城市に提出した審査請求書中のCCC運営に関する記載を本文末尾に追記しておく。


 なお、CCCを公共施設の運営者に選定した自治体においては、本件と同様の行政が出した黒塗り公文書について審査請求人をはじめとした市民から度重なる審査請求が行なわれており、それらの自治体においては、情報公開審査会が詳細に検討した結果「開示すべき」との答申が出されていることも付記しておく。

 たとえば、審査請求人が20216月に熊本県宇城市に行なった審査請求では、審査請求の手続きを行なったとたん実施機関は、審査会の答申を待たずして、CCCと競合した企業名の黒塗りを一部外した文書を開示し、また審査会の答申後には、黒塗りされていた選定委員に関する情報の大半が開示された。

 2017年にCCCを図書館の指定管理者に選定した和歌山市では、地元市民が翌年3月、黒塗りだらけの開示に対して審査請求を行ない、それまでほぼ全面黒塗り状態で開示されたCCC及び同社と競合したTRC図書館流通センターによる提案書について、その約8割の黒塗りがはずされた文書が開示されている。

 さらには、坂出市のお隣りにある丸亀市でも、20228月、CCCが運営するマルタスの運営費の内訳が「企業の競争上の利益を損なう」ことを理由にすべて黒塗りだったのが、情報公開審査会で審議された結果「すべて開示すべき」との答申が出され、運営費の詳細な内訳が市民に対して開示されることとなった。

 坂出市でも、情報公開審査会の委員の先生方には、必ずや、公正公平で賢明なご審議をしていただけるものと期待しております。




《参考情報》ツタヤ図書館誘致自治体における不祥事

(20216月に宇城市に提出した審査請求書より引用)


 本件の指定管理者に選定されたカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)は、2013年に佐賀県武雄市で公共図書館の運営を受託して以来、その運営手法の是非が、図書館界のみならず、広く世間一般で関心事になっているのは周知の通りである。


2015910日には、同社が、武雄市図書館の運営するにあたって、市場価値が極端に安いと思われるような中古図書を大量に系列企業から仕入れて図書館に配架していたことが発覚。この件では、増田宗昭社長自らの名前で書かれた謝罪文を自社サイトに掲載した。【※1


 また、同時期に同社の指定管理がスタートした神奈川県海老名市では、共同事業体を構成する業界最大手のTRC図書館流通センターの谷一文子会長(当時)によって、同社が導入した独自分類やその独善的運営手法が厳しく批判されるなどの問題が表面化しており、


以来、同社の図書館運営能力に関して疑問を抱く市民が続出し、武雄市だけでも住民訴訟2件、神奈川県海老名市でも住民訴訟1件、宮城県多賀城市では住民監査請求2件が提起されている。


201510月には、愛知県小牧市で同社に運営を委ねることに反対する市民が続出し、同社が提案する新図書館建設計画について住民投票が実施された結果、計画中止に追い込まれた。


2016年には、同社が図書館の空間設計から手掛けた計画が進められていた山口県周南市でも反対運動が起こり、住民投票実施をめぐって8737名もの有効署名が提出されたが、議会はこれを否決して世間的な批判を浴びた。



 そうしたなか、同社が参加した公共施設の指定管理者選定に対しては、世間的な注目度は非常に高く、選定プロセスが公正公平に行われたことを示す必要があるため、201712月に同社を市民図書館の指定管理者に選定した和歌山県和歌山市では、同社選定プロセスを詳細に開示した。


ところが、和歌山市が開示した文書は、黒塗りばかりで不開示が多かったため、市民が審査請求を行った結果、審査会において、昨年10月に一部開示命令が出されている。


201910月には、和歌山市内の会社経営者が、同社指定管理に決まった市民図書館建設に関係した公文書のほとんどを市当局が黒塗りで不開示としたことに強く抗議して、和歌山市長を相手取った国家賠償請求を提起している。


最近では、20209月、山口県宇部市において同社を運営者とした複合施設の計画が一度は採用されたものの、余りにも費用対効果が良くないとして、施設条例が市議会で否決されている。


以上のような経緯を知る者としては、今回宇城市が行った図書館と美術館の指定管理者選定プロセスについての情報開示は、2013年以来、日本全国で起きた、いわゆる「ツタヤ図書館問題」などまるで何もなかったかのような杜撰な対応であり、情報開示による事業の透明化を求める世間の流れと逆行しているといわざるをえない。











【※1CCCサイトに掲載された増田宗昭氏の謝罪文。現在は削除されている。