2025年1月28日火曜日

教育委員会を徹底排除? 坂出市ツタヤ図書館の衝撃

 

こんにちは、日向です。



ツタヤ図書館問題を調べていると、各自治体の非常識な対応に、めったやたらと遭遇しますので、もうたいがいのことには驚かなくなっているんですが、


そんななかでも、本日、またメガトン級の“非常識ネタ”に出会いました。


香川県坂出市が昨年9月に発表した、JR坂出駅前にツタヤ図書館を核とした複合施設を建設する件です。



https://www3.nhk.or.jp/lnews/takamatsu/20240911/8030019332.html より




坂出市は8月27日、JR坂出駅前と坂出緩衝緑地の再整備を進める事業者として、大手ゼネコンの大林組を代表とするグループを選定し、このほどグループから提案された計画を明らかにしました。


それによりますと、駅前に作る拠点施設は吹き抜けの4階建てで、カフェやラウンジのほか、「TSUTAYA」を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブが手がける図書館も入るということです。(NHK NEWS WEB09月11日 JR坂出駅前の再整備 “図書館を核に” 拠点施設計画を公表より)


この件について、先週、CCC選定までの詳細なプロセスがわかる公文書を坂出市の総務課に開示請求しましたところ、


所管しているはずの教育委員会には、「文書はなにもない」と情報公開担当課の方から連絡がありました。


ということは、坂出市は、最近よくある図書館など教育文化施設の所管を教育委員会から市長部局に移管していて、


通常、教育委員会で必要とされている手続をしないでも、市長部局だけの決裁でなんでもできるようにしているんだろうと思ったんですね。


一応、その確認をしようと、本日、図書館部門のトップである館長さんに直接聞いてみたところ、


(市長部局へ)移管はしていません


とおっしゃるんですよ。


えっ?


でしたら、教育委員会でなんらかの手続を経ないと、いきなり駅前の複合施設に新しい図書館を建設するなんていう計画ができるわけがないのでは? 計画どころか、PFIで建設から運営まで担当する事業者もすでに選定されていて、そこにちゃっかりCCCが入っているんです。


図書館を駅前に移転して建替え、いまの中央図書館は廃止し、その運営を民間企業に委託(指定管理がどうかは不明)するという、地元元市民にとっては、このうえもなく重大な事柄について、所管する教育委員委員会では一度も議題にのぼることがなく、もちろんその承認も一切経ておらず、民間委託へ向けた条例の改正もなく進められていたわけで


いきなり、


賑わい創出のための図書館を駅前につくるよ、すごいでしょ。


と市長が宣言したということなんですよ。



新しい図書館を建設するとなければ、まずは図書館協議会などで議論したうえで、パブリックコメントを募集して市民の意見を聞いたり、ワークショップを開催したり、検討委員会を立ちあげて有識者の意見を聞いたりしたうえで、新図書館の基本計画を策定するものです。


村民への説明会を一度も開催しなかったと批判されている、あの沖縄県読谷村ですら、10年前に策定した図書館基本計画はありました(消されていた検討委員名簿)。多賀城市も和歌山市も、同様の計画文書は存在しました。


どの自治体も、曲がりなりにも、一応は、教育委員会内部でそれらのプロセスを経ていて、そこから初めて、新図書館の基本構想とか施設の基本設計を担当する事業者が決まるという流れでした。


建設と運営を一括にして民間に15年~20年委託するPFI案件であっても、教育委員会の承認が必要ないはずがありません。現に、読谷村は、坂出市と同じくPFI案件でした。



「いくらなんでも、教育委員会の手続がなにもないというのはおかしいんじゃないんですか?」と、館長さんにお聞きしましたら


えっ、なにが悪いの? それあなたの意見でしょ?


みたいな対応をされまして、図書館部門のトップなのに、まったく話が通じないといいますか、法制度が異なる外国の人と会話しているようでした。



そういうことは全部、公民連携・DX推進課で決めてますよ


と、おっしゃるんです。



図書館協議会は、一応設置されているそうなので、その場で今回の駅前図書館の件は議論はされているのでは?


と館長さんにお聞きしましたところ、



議論はしていないけど、パンフレットなどの資料は委員全員に配布した


そうです。当然、プロジェクト内容について詳しい説明はされたのでは?


と、さらに、しつこくお聞きしましたところ


市民向けのパンフは委員全員に配布したけど、特に説明はしていません


とのことでした。



ということで、徹頭徹尾、所管する教育委員会をパスというか、ないがしろにして、新しい賑わい創出型図書館を駅前に建設するという坂出市は、市長の独断でツタヤ図書館を誘致した12年前の佐賀県武雄市の原点に戻ったかのような様相を呈しているんです。


これまたすっかり忘れていましたが、坂出市がツタヤ図書館を誘致するであろうことは、以前書いた記事で予想していましたが(「公民連携」の種明し)、現実に、教育委員会をここまで徹底的に無視した市長独断の実態を目の当たりにすると、もう言葉がないと言いますか、とてつもない衝撃を受けました。


武雄市図書館・歴史資料館が2013年4月にオープンして以来、CCCによる図書館運営を決めた自治体の不適切な決定ブロセスが世間の批判を浴びて、もういまでは、あんなあからさまなことはできなくなったと思っていた矢先に、まるで12年前に時計を逆戻ししたかもような自治体が現れるとは、夢にも思いもしませんでした。



そう言えば昨年9月、この計画が報道された直後に、坂出市の担当部署に、テンプレの質問をしていたことを思い出しました。



選定されたカルチュア・コンビニエンス・クラブは、2019年2月に基幹事業が消費者庁に違法認定されて、1億円の課徴金を課せられた“嘘つきTSUTAYA”を違法認定)ことはご存じですか?



担当課の回答は


知りません


でした。



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2025年1月10日金曜日

沖縄読谷村、“月給10万円で館長募集”の真相

 

こんにちは、日向です。


今年10月からツタヤ図書館として開館予定の沖縄読谷村について、ひとつ気になったことがあったので、取り急ぎメモしておきます。


1月5日に、いつもsnsでツタヤ図書館情報をウォッチしている方が、


読谷村が月10万円で図書館長を募集してる


との情報をポストされていました。






鳴り物入りで開館する沖縄・読谷村のツタヤ図書館の館長の給与が月10万円だなんて、いくらなんでも酷い待遇だなぁ


そう思って、読谷村の募集条件を詳しくみてみたら、


“週3日勤務の会計年度任用職員”としての募集でした。


また勤務期間も、CCC運営になる前の今年4月~9月末までとなっていて、その期間中は移転作業のため休館しているはずなんです。


ということは、教育委員会から学校教育関係者を館長に据えて、その人物が10月から横滑りでCCCの職員として、民間委託した図書館の初代館長になるのではないのかと思いました。


2016年にツタヤ図書館としてオープンした宮城県多賀城市立図書館がまさにそのパターンで、地元で校長までつとめた図書館協議会の会長だった人物が、定年退職後に、CCCに入社して新図書館準備室の室長になり、新図書館開館後に初代館長として就任していました。

ツタヤ図書館、市から「天下り入社」疑惑の新館長を直撃!「市長から声かけられた」


それと同じパターンで、教育委員会がCCCのお目付け役としての館長を募集しているのではないかな


そうとらえたんですね。


ところが、本日、読谷村役場のあちこち確認したところ、そんな私の推測は完全に間違ってました。



結論から言えば、現在、直営館の館長をつとめている方が4月以降も、そのまま館長を継続する見込みであり


すでに、マネージャーとして現地に赴任しているCCC社員のI氏という人物が10月から館長に就任する予定である


ということがわかりました。


じゃあ、なんで募集しているの?


そう思いますよね。これ、会計年度任用職員というおかしな制度の特徴なんですが、原則単年度の契約(任用)なので、勤務希望者はそのつど履歴書を提出して登録するというしくみになっているらしく、今回の図書館長も、単にその登録者の募集をしていただけということのようです。



https://www.vill.yomitan.okinawa.jp/gyosei_joho/jinji_saiyo/shokuin_saiyo/R5_1/2184.html



すでに定年退職されていて、再任用のような形で図書館長を務めていらっしゃる方が「4月以降も勤務すると聞いている」とのことです。


なるほど、だから、週3日勤務・月給10万円という条件だったんですね。この条件の範囲なら、受給中の年金が減額されることなく働けるメリットがあるわけです。




さて、ここで注目したいのは、募集条件に「司書資格」が求められていないことです。多くの自治体では、直営の図書館長になるのは、特定の専門畑を歩んでこられた方ではなく、いろんな部署をご経験されてきた、いわゆる行政職ですから、司書資格を持っていないことが多く、読谷村でも、おそらくその例にもれず司書資格のない館長さんがつとめられているんだろうと思います。


現在CCCのマネージャーとして、新図書館の立ち上げを担われている方が、新図書館の初代館長に就任されることが予定されているそうです。ただし、新館長就任については、教育委員会での協議が必要になるとのことで、まだ決定ではないそうです。


果たして、その方は司書資格の保持者でしょうか。直営とは違って、民間企業が運営を受託する場合には、専門知識のあることを証明するために、必ず司書資格のある社員がその任にあたるものですが、CCC運営のツタヤ図書館では、どういうわけか、司書資格のない社員が館長になることがこれまでも何例か(不機嫌な新館長)ありました。


彼らとしては、図書館本体の運営なんかどうてもいいとまではいいませんが、そこでの専門性よりも、派手なイベント企画・開催や組織マネジメント能力を重視しているようなので、商業施設の店長のような役割を果たす人が就任するものと思われます。


そうしたなかで、もうひとつ気になるのが4月から半年間、休館して行われる旧館から新館への移転作業です。これは、他のツタヤ自治体でも関係者の方が、さかんに指摘されていたことなんですが、自治体サイドの職員がCCCのスタッフと一緒になって、移転作業を行うと、偽装請負になってしまうのは避けられないということです。


蔵書の引っ越しなどは、その業務を受託したCCCが単独で完遂することが求められていますが、しっかりしたノウハウと十分な人員を確保できていないそうなので、どうしても自治体側の職員が現場で手助けしてしまうらしいんです。


自治体職員が、あらかじめ仕様書で定められたこと以外について、業務責任者を通さず現場でで指示命令を出したり、具体的なアドバイトをしたり、作業を手伝ったりすると、それだけで偽装請負になってしまうんです。かといって、なにからなにまで知り尽くした旧館のスタッフが黙ってみているわけにはいかず、結果的には、一緒になって作業をすることが他のツタヤ自治体でもあったそうなんですね。


その点を読谷村の関係者にお聞きしますと、偽装請負に陥ってしまうリスクは認識されている様子でしたが、具体的にどうするかというところまではまだご検討はされていないようでした。


3年前、PFI決定までのプロセスでも、あまたの不正疑惑にまみれ、署名活動までされて要求されてきた住民説明会も一度も開催することなく、今年10月にいよいよオープンする読谷村のツタヤ図書館(説明会開催せずに逃げまくった読谷村の宣伝文句 読谷村のSPCからクレームがきました)。お祭り騒ぎのように新図書館オープンの話題が、これから地元メディアを賑わすと思いますが、その内実は10年前とたいして変わっていないような気がして仕方ないのですが。



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地元企業とタッグを組むCCC

 

こんにちは、日向です。


近く完成する和歌山市の西コミュニティセンター(コミセン)の指定管理者にCCCが選定されていた件、本日は、私の感想を少し書いておきたいと思います。


まず、事実関係を簡単に整理しておきますと、


和歌山市にはすでに、公民館的機能を果たす地域交流の場として市内7か所にコミセンが設置されています。


地元の方によれば、そのうち6か所には図書室が設けられていて、いずれも和歌山市民図書館とオンラインで結ばれて互いに貸出・返却などのサービスを受けることができるそうです。つまり、和歌山市のコミセンは、一館をのぞいて、実質的には地域の図書館機能も担っているわけです。


ところが、新たにできる8館目の西コミセンは、なぜか、この図書館機能が設けられていません。


にもかかわらず、そこの指定管理者に選定された団体にCCCが入っているのは、とってもヘンだと思いませんか。


前にも述べたように、CCCが延岡市エンクロスや丸亀市マルタスで運営している、本の貸出はせずに閲覧だけに限定した“図書館もどき”市民センターを、和歌山市でも設計段階から関与できれば、1円の投資もせずに、自社の思うままの施設を作りあげることができるメリットがあります。しかし、和歌山市からすれば、CCCにコミセンを任せるメリットなんかあるのでしょうか。


そう疑問に感じていたところに、昨年11月の選定結果の表をみて「なるほど、そういうことなのか!!」と思ったのが、阿形教育長とつながりの深い㈱KEGキャリア・アカデミーが、指定管理者に選定された団体・ぶんきょうの杜舎の代表企業になっている点でした。





この団体にCCCが参画した時点で、選定結果は、もう決まったようなものでした。


採点結果をみてみれば、その点は一目瞭然です。ぶんきょうの杜舎がほかの2団体に大差をつけているのは、CCCがいつものようにツタヤ図書館もどきの実績を、広告宣伝風に提案書で過大にアピールしたからでしょう。同社の運営実態をご存じない選定委員の方々にとっては、「延岡市エンクロス年間200万人来館!」という誇大宣伝(読谷山市長が暴いた来館者数のカラクリ)をすっかり信じ込ませられたであろうことは想像に難くありません。



一方で、2020年度から、“若竹学級運営委託事業”と呼ばれている学童保育を受託している㈱KEGキャリア・アカデミーは、「天の声」(天下りした企業を選定した和歌山市・阿形教育長)を受けていてもおかしくないポジションにはいましたが、コミセンの運営を一社で任せるとなると、やや疑問符がつきます。


ということは、㈱KEGキャリア・アカデミーとCCCをくっつけた人物がいて、その人物の思うままに、今回は、ことが運んだんだろうと思いました。それが誰なのか、地元の市議なのか、市長の関係者なのか、それとも民間の人物なのかはまだわかりません(ご存じの方はぜひ、コメント欄に情報をお寄せください)。


なお、和歌山市のコミセンは、現在、一館のみ直営で、残り6館は、公益財団法人である和歌山市文化スポーツ振興財団が非公募で選定され、運営にあたっています。いわば半官半民のような形で運営されてきたわけです。そこに新たにできる西コミセンを民間企業の指定管理にするということは、いずれ8館すべてを民間委託しようという腹積もりなのでしょう。


CCCからしてみれば、図書館運営は結構な人件費がかかってしまうため、たいしてうま味はないと感じているのかもしれません。その点、市民センターであれば、本の貸出をしないので図書館ほど人手をかけることなく、本を納入するだけで利益率は高くなるでしょうし、何より、すでに市民図書館の運営を担っているマネージャーに、新しいコミセンの立ち上げも担当させることもでき、司書資格のいらないスタッフを兼務させることもできなくはないでしょう。


そうして、和歌山市の行政に、より深く入りこむことで、周辺の事業を受託することも容易になるという計算があるのかもしれません。


全国のTSUTAYA店舗が大量に閉店したり、TカードブランドがsmbcのVカードと合併して消滅する一方、次の事業の柱になるはずのシェアラウンジ事業や海外展開での苦境が伝えられるなど、本業は衰退の一途をたどっているCCCにとっては、唯一の成長分野が公共サービス部門なのだろうと思いました。


役所の中の人も選定委員も、特定企業を優遇した民間委託であることは百も承知で、ただ流れに身を任せているだけなのかもしれませんが、市民の大切の公共施設が民間企業の食い物にされることの意味をもう少し真剣に考えてほしいと思うのですが…。




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