2019年2月2日土曜日

“ペーパー図書館”と国交省

昨日のつづきです。


全国市街地開発協会という謎の公益社団法人と契約した和歌山市は、2012年から3年連続で3回にわたって、まちづくりに関する計画策定業務を発注しています。

同協会の下請けで入り、その実務を担当したのが、誰あろうCCCの代官山蔦屋書店を手掛けた設計事務所で、建設コンサルタントのRIAだったのです。


下の図をみてください。

これが昨日説明しました2014年9月に突如として出てきた和歌山市の南海市駅再開発に関する報告書の一部分です。
(『和歌山市 まちなかエリア 公共施設の課題整理と再整備の方向性について』A3版全14ページ)


A3コピーするときに左右が反転しています。図書館部分になると、なぜか黒塗り部分が増えてくる






これまでの経緯をふまえたうえで、南海市駅エリアの再整備の必要性を述べていると思ったら、唐突に市民図書館の建て替えについて言及しています。

このなかで、参考事例として紹介されているのは、徳島市立図書館、和泉市立図書館、武雄市図書館、多賀城市立図書館の4事例でした。






 武雄市を除けば、いずれも駅前=中心市街地の再開発を目的として新築された図書館なんですが、このうち、徳島市立図書館と多賀城市立図書館は、RIAが設計を手掛けた建物でした。

また、武雄市の図書館は、RIAによる設計ではありませんが、みなさんご存知のように、TSUTAYA図書館第1号です。

「手前味噌」と言われても、やはり自分たちが手掛けたプロジェクトは自慢したいでしょうから、すでに開館されて賑わっているのでしたら、2館入っているくらいは大目にみましょう。

また、武雄市も、まだ古本騒動が勃発する前のことですから、新しい試みとして話題になったことを紹介するのも、まぁ仕方ないでしょう。

しかし、誰がどうみても、ここに出てくるのが不適切だと思われる事例がひとつあります。

それが、宮城県・多賀城市立図書館です。

同館が「第三のツタヤ図書館」として、新装開館するのは2016年3月のことです。

この報告書が提出された2014年9月には、まだ建物の骨組みすらできていません。この世に存在しない「ペーパー図書館」といってもいいでしょう。


報告書の事例紹介では、まだ建物すら完成していない宮城県多賀城市立図書館の計画が紹介されていた。20163月にCCC運営のツタヤ図書館として新装開館した同館も、RIAがコンサルタントとして計画段階から関与して、施設の設計を手掛けていた。


それをここまで“ドヤ顔”で紹介するとは、あいた口がふさがりません。

武雄市も、それに続く海老名市も、既存の建物を改装してTSUTAYA図書館としてオープンしていますので、建物をTSUTAYA様式で新築して作られた最初の図書館が多賀城だったのですが、それは、この時点では、まだ影も形も存在しておらず、紙の上だけの計画にすぎませんでした。

しかも紹介文に


「CCCが、宮城県多賀城市が進める図書館などの施設整備について、同市と官民パートナーシップ(PPP)を結ぶことで合意」

とありますが、それは、CCCが指定管理者に選定される前の出来事にすぎず、CCCが適切な手続きを踏んで選定されたとは書かれていません。

文書が発表された2014年9月には、かろうじて正式な選定手続きは終わっていますが、この文章が書かれた時点では、まだ正式決定には至っていなかったかもしれません。

「合意」とは、CCCが多賀城の新図書館建設にアドバイスをするよという連携協定を締結しているにすぎないのですから。

翌年には、選定前の2013年7月からCCCが多賀城市教委のスタッフと密談していた内部文書が暴露されています。

RIAが、まだこの世に存在しない「ペーパー図書館」を紹介したのは、和歌山市も多賀城と同じく、TSUTAYAを誘致して駅前の賑わいを創出するという話が、この時点で、すでにすっかり出来上がっていたからではないでしょうか。

そして、予定通り都市計画を進めていけば、巨額の補助金を国から引き出すことができると、プロジェクトの関係者たちは、みんが有頂天になっていたのではないでしょうか。


すべて随意契約


 さて、和歌山市が契約した謎の公益法人・全国市街地開発協会についても、もう少し補足しておきましょう。

開示請求でわかったのは、和歌山市が同協会に委託した計画策定業務は、総額にして2300万円(2012年1900万円、2013年300万円、2014年87万円)でした。

それだけの受託金額であるにもかかわらず、この件に関して和歌山市が事業者を公募した形跡は見当たらず、同協会には、いずれも随意契約で発注していることです。

同協会が国交省の関連団体であることからすれば、

巨額の補助金をひっぱってくるプロジェクトを進めるためには、県庁が国交省からの天下りを受け入れたのと同じく、同協会を通して指定のコンサルタントに計画立案を依頼しないといけないということなのでしょうか。


また、実務を担当したのはRIAなので、結果的にRIAは、事業者としての審査を一度も経ることなく、スルスルッと巨額プロジェクトに入り込んでいる点にも注目してください。

いったい、どうしてそんなことが可能なのでしょうか。

取材でわかったのは、以下のことでした。

・和歌山市は、全国市街地開発協会から、同協会の会員であるRIAを紹介された。(同協会の下請けで、委託した業務を担当してもらった)

・和歌山市は、同協会の会員ではない

・RIAを紹介されたのは「和歌山市の実情に詳しいから」

 「和歌山市の実情に詳しい」ということは、過去に和歌山市に関連した仕事をRIAは手掛けているわけですよね。

だとしたら、直接依頼すればよいものを、わざわざ国交省の関連団体である協会に“紹介”してもらうというのも実におかしな話です。

とにかく、矛盾だらけなので、自分で書いてても突っ込みどころ満載だと思うのですが、


・和歌山市は、全国市街地開発協会に依頼して、和歌山市の実情に詳しいRIAにまちづく計画を策定してもらった 
・その計画の中心には、いつのまにか「駅前に図書館をもってきて集客する」という案がすえられていた

--ということだけは、間違いのない事実です。

そして、RIAは、和歌山市の仕事をしながら、まったく同じ時期に、南海電鉄のコンサルティングもしていたことを、私の取材に対して、南海電鉄サイドが認めました。

こうして、RIAは、公募を経ることなく、巨額プロジェクトに次第に深く食い込んでいき、基本設計から実施設計、施工管理といった設計関連業務を独占的に獲得していくのです。

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