2025年8月8日金曜日

CCC受託実績を読む~うるま市、高山市、紫波町、経産省~

 

こんにちは、日向です。


につづきまして、本日も、最近、CCCが受託した自治体の事例について書いておきたいと思います。


下の表をみてください。先日の一覧表では漏れていたCCC受託自治体一覧の追加がこれです。






4つの自治体とひとつの政府機関、計5案件が漏れていました。


埼玉県春日部市だけはすでに別エントリーで詳しく取り上げましたので、今回は、そのほかの4案件について、駆け足でみていきたいと思います。


●読谷村に次ぐPFI採用したうるま市


まず、4案件のなかでもすでに確定しているのが、沖縄県うるま市です。こちらは、世界遺産・勝連城跡周辺の整備事業をPFI方式で進められていて、公募が発表されたのが一昨年2023年11月、事業者選定が発表されたのが昨年2024年8月でした。


年間約18万人の観光客が訪れる勝連城跡は、世界遺産「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の1つ。周辺整備が不十分なため、観光消費・地域活性化につながっていないとして、民間資金とノウハウによって周辺を整備しようという事業らしいのです。


しかし、観光資源を活用した賑わしい創出という点でCCCにはとりたてて、過去になんの実績はないと思うのですが、なぜか、応募のあった3グループのなかで、CCCが「協力企業」として参画している事業者グループが選定されました。(代表企業:株式会社トータルシティービル管理)


武雄市図書館・歴史資料館などは、コロナ前から海外からのインバウンド客が観光バスで大量に見学に来ていると言われていましたので、中身関係なく「雰囲気のいい施設」として図書館を広めてきた経験と実績が高く評価されたんだろうと思います。まぁ、その“ハリボテを流行させた実績”からすれば、本物の世界遺産などの集客もいとも簡単にできてしまうと思われてのでしょう、きっと。


うるま市は、読谷村に次ぐ沖縄県内2例目のPFIです。読谷村の事業プロセスを詳しくみてきた経験から言えば、「建設と運営を合体させたPFI方式にすれば、自治体は、一切合切をコンサルタントに任せられるので、なんでもアリ」という印象です。




https://web.archive.org/web/20240112023748/https://www.city.uruma.lg.jp/1002003000/contents/p000001.html


●いきなり運営者を選定した高山市


一方、一般的なまちづくり案件ととらえた場合、これぞ公設ツタヤの典型的な手法ではないかと思ったのが岐阜県高山市です。


「飛騨高山」で知られる高山市では、高山駅西地区のまちづくりの方向性を決める市民アンケートやワークショップを2022年からスタート。このプロセスを経て、2023年5月には、文化術機能、生涯学習機能、子育て支援機能などを備えた複合施設の整備を盛り込んだ基本構想を策定。


驚くのは、この後です。ふつうなら、どのような公共施設を整備するのかを正式決定したうえで、それら施設の基本設計とか実施設計に進むはずですが、高山市は、なんといきなり


維持管理業務及び運営業務等を実施する民間事業者


を公募型プロポーザルで募集したんです。


つまり、なにとなにをどこにつくるか、どうつくるかという話を、すべてすっ飛ばして、いきなり運営業者を決めたんです。それが今年3月のこと。


選定されたのは、企業イベント、国際会議のプロデュースを主な事業とするJTB コミュニケーションデザインを代表企業とし、構成団体としてカルチュア・コンビニエンス・クラブが入った企業グループでした。応募は2社あったものの、そのうち一社は参加資格を満たしていないとされて失格となったため実質的には1グループのみ提案審査というお寒い状況でした。


埼玉県春日部市の場合も、どんな公共施設をつくるかは未定のままでしたが、さすがに、いきなり運営者を選定するなんて野蛮なこと(?)はしてませんでした。春日部市は、あくまでも事業計画を立案するための「構築等支援業務」委託です。


それが、高山市の場合は、とにかくなにをつくるかも含めて提案してよ、そしたら、設計から運営もすべて任せるから。


と言ってるようなものですね。


選定されたCCCグループの提案書概要をみますと、


市民と共に育む、開かれた「まちのリビング」

人々が笑顔で集い、日常の中に新たなわくわくした発見と出会いが提供される

「高山市らしい賑わいと文化の拠点」として、未来にわたって愛される場を創造し続けます。


――などとなっていて、いつもの“CCC節”が炸裂していました。「まちのリビング」というキーワードは、坂出市でも使ってましたね。だんだん使いまわしがバレてきたような気がします。


https://www.city.takayama.lg.jp/shisei/1000061/1016569/1021674.html より



で、飛騨の高山市ですが、特にうるま市のように観光資源を活かした、外からの人を呼び込む「にぎわい創出」ではなく、文化ホールか子育て支援施設など、あくまでも市民を対象にしたまちづくりになっています。


それにしても「建物の設計の前に、いきなり運営者を決めるなんておかしいのでは?」と高山市の担当課に聞いてみましたところ「ただのハコモノではなく、市民本位の事業にするためには、先に運営者を決めて、その意向を設計等に反映したほうがよりいいものになる」というようなことをおっしゃってました。


そこで「いきなり運営者を決めて施設をつくった自治体で、参考にしたのはどこ?」と聞いてみましたところ、担当の方がこう答えたのにもビックリしました。


大阪府門真市です。


まさに、ピンポンですね。来年春に新しいツタヤ図書館としてオープンする予定なのが門真市です。このPFIでもないのに、事業者が自分たちのやりたいように公共施設をつくる「デザインビルド」を可能にするスキームこそが、ツタヤ図書館方式なんですから。


●あのオガールの町・紫波町がCCCを選定


さて、高山市で驚いていたところに、もうひとつ自治体あったなぁと思って調べたのが岩手県紫波町(しわちょう)です。


ここは運営事業者の選定ではなく、温泉保養公園の再整備に関する計画でした。古くなった温泉保養施設の周辺を再整備する計画で、その基本構想等を策定してくれる事業者を公募したところ、CCCが選定されたということらしいんですが、応募事業者は、CCC一社のみ。なぜかどこも関心を抱かなかったというこれまた、寒ーい案件です。


ここで、でも、まてよ。「しわちょう」って聞いたことあるな。そう思って検索してみたら、これまたビックリ仰天。図書館関係者でしたら、知らない人がいない、あの「オガール」がある町なんです。


オガールといえば「小さな町が、国の補助金に頼らず、官民連携プロジェクトで、すばらしい図書館をつくった」というサクセスストーリーが有名です。


複合施設のなかに、図書館や地域興隆センター、子育て支援施設を設置して、カフェなど民間店舗も集積したまちづくりとして2012年頃から話題になり、全国から視察がひきもきらない、成功事例として超有名なまちでした。


そんな町が、温泉保養施設の再整備計画をCCCに任せるということ自体が、どうなってんの?という話です。不可解としかいいようがありません。


私は、紫波町の「オガール」が官民連携のお手本だとは思いません。「成功事例」だとも思いません。たまたま地域の人が知恵を出し合った結果、地域の人が望むようなまちづくりができたという意味では成功なんでしょうけれど。


それは、オシャレな雰囲気のブックカフェ図書館をまるごと誘致するために、都会の企業に、なにからなにまで丸投げしてしまったツタヤ誘誘致自治体とは対極にある事例だと思います。紫波町は、CCCに何を望んているのでしょうか? 


担当課聞いてみると、具体的になにをどうするかは、まだなにも決まっておらず、現在、温泉保養施設を運営している地元事業者がいるとのことなので、それを簡単にCCCに変えるということも考えづらい。このまま話が進むとも思えませんが、果たしてどうなるのでしょうか。


●“ツタヤ図書館方式”を採用した経済産業省


さて、トリはなんといっても、政府機関のツタヤ店舗です。経済産業省別館の、誰でも利用できるオープンな共創空間「ベツイチ」にカフェ「霞が関珈琲」が、この8月にオープン。これを運営しているのがCCCらしいんです。


国の建物で民間事業者が店舗を出すんですから、当然、なにかしら公募を経て選定されたんだろうと経産省に直辣問い合わせてみましたところ、その経緯がわかるページを教えてくれました。


https://www.meti.go.jp/information/publicoffer/koji/2025/20250220.html



与党の大物議員ともツーカーの間柄と言われるCCCグループの総帥・増田宗昭御大のことですから、コンペなど経ずとも、おいしい話が自動的に転がり込むのではないかと思っていたので、ちょっと意外でした。


そりゃあ、そうですよね。コンペですよね。


そう思って、募集要項をパラパラみていたら、あれれっと思う内容が次々と出てくるてのはありませんか。


募集開始が2/20、応募締め切りが3/13と、3週間しかない。土日を除けば、10日もないかも。この募集情報を知ってすぐ準備して応募できた事業者は、いったい何社あったのでしょうか?


また、ツタヤ誘致自治体でもいつも問題になる賃料ですか、



これがなんと


1平米あたり1,830円!


コーヒースタンド(厨房・カウンター)・物販店舗(陳列棚) 12.09㎡、バックヤード12.08㎡を足すと計24.17㎡


これに1,830円をかけると、カフェ店舗の月当りの賃料は、4万4,231円!





黙っていても、庁舎内で働く人たちがきてくれる霞が関の一等地お店の賃料が、たったの4万円だそうです。


もともと単価が安いうえに、厨房とカウンター、陳列棚のみ賃料の対象なんですから、そりゃあ激安になりますよね。


ちなみ、この募集要項には、こんな但し書きがついています。


【参考】

○ロビーホール(貸与外)店舗周辺約220㎡(席数約45程度)

・ホールについては使用許可対象外であり、職員の共用スペースとなるが、使用許可を受けた場所で給したものを飲食させることを妨げるものではない。


つまり、45席あるロビーホールについては、そこで客が飲食してもオッケーということは実質店舗の席と同じになるわけで、そこが賃料無料なんです。


これぞまさしく、「ツタヤ図書館方式」と言ってもいい、法の抜け道を駆使した裏技ではないでしょうか。


おそらく、政府機関にも、これからCCCはどんどん進出していくものと思われます。



というわけで、最近の公共分野におけるCCC受託案件をざっとみてきた感想としては、


smbcにアピールするために、相当焦っているのかな、


と思いました。


海外店舗や、頼みの綱のシェアラウンジも、いまいちぱっとしないと言われるなか「CCC復活」を手っ取り早くアピールするためには、公共部門でお得意の「官民連携成功事例」としてメデイアに取り上げてもらうのが近道だと思っているのではないかな


そんな感想を抱きました。


一方の自治体サイドは、特になにか考えているわけではなく、これまで通り、地方創生コンサルタントに言われるままに、「過疎ビジネス」の餌食になっているような印象です。


ということで、本日は、ここまでにします。


よろしくお願いいたします。



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