こんにちは、日向です。
先日、和歌山市教育長が教育委員会所管の施設運営者について、とってもおかしな決裁をしていたと書いた件(和歌山市の教育長が“李下に冠を正す”の巻)で、ひとつ重大な事実を見落としていました。
下をみてください。
2021年に教育長に就任する際、地元紙が報じた阿形氏の経歴にご注目ください。今回、西コミセンの指定管理者に選定された㈱KEGキャリア‧アカデミーに入社される前には、市教委で、教育局長をつとめていたと書かれています。
教育局長といえば、教育長に次ぐポストで事務方のトップです。和歌山市議会では、教育長に代って教育委員会の施策について答弁する機会も多く、CCCが指定管理者に選定された直後などは、図書館運営についての質問は、もっぱら教育局長が回答していました。
その事務方のトップだった人が、なぜか2020年には、民間企業の㈱KEGキャリア‧アカデミーに転籍されていました。下に掲示したのは、2020年にコロナ禍で学校が休校になったとき、この会社が受託している学童保育が貴重な子どもの居場所になっていることを報じた記事です。この記事でコメントしているのが、当時、㈱KEGキャリア‧アカデミーの事務局長だった阿形氏なのです。
わかやま新報2020年5月10日 『子どもの居場所も緊張感 休校中の学童保育』より https://wakayamashimpo.co.jp/2020/05/20200510_93859.html |
つまり、役所で教育局長まで上り詰めた人物が、その影響下にあるというか、密接な利害関係のある民間企業に天下っていたわけです。
で、ここまででしたら、「まぁ、そういうこともあるのかなぁ」くらいで話は終わりますが、この後、民間企業に一度天下った阿形氏が古巣にもどって、今度は絶大な権限を持つ教育長に返り咲き。その権限を駆使して、かつて天下った民間企業をコミセンの指定管理者に選定していたということになってしまいます。
こんなあらさまな癒着はなかなかないと言いたいところですが、和歌山市では、こういうことは、そんなにめずらしいことではないのかもしれません。
教育分野に深い知見を持った教育長が、市が仕事を発注する企業とズブズブの関係だったなんていうのは、にわかには信じられないことです。
そこで疑問が沸いてくるのが、なにゆえ、㈱KEGキャリア‧アカデミーという会社が2020年時点で放課後にこどもたちを預かる学童保育事業を受託していたのかという点です。
市議会の議事録を調べてみると、2019年9月議会で、“若竹学級運営委託事業”と呼ばれている学童保育の民間委託について活発な議論が行われていました。
民間委託する理由としては、学級数の増加に伴う指導員の人員不足があげられていました。翌年度から会計年度任用制度が始まることもふまえて、民間委託したほうがより柔軟に人を採用できて、より高い保育サービスを提供できるとした執行部の説明に対しては、民間委託に反対する議員はもちろん、それに賛成する議員からも、民間委託したときのデメリットをどう解消するのかという方向で、厳しい意見があがっていました。
https://ssp.kaigiroku.net/tenant/wakayama/SpMinuteView.html?council_id=539&schedule_id=2&minute_id=4&is_search=true |
それぞれの意見の内容について書くと長くなるので辞めておきますが、令和2年度から令和4年度までの3年間に、14億6020万円、1年あたり4.8億円にもなる学童保員事業を民間委託するにあたっては、直営(15億円)よりも安くなるという試算が提示されて、最終的には、この議案が通ってしまいました。
そもそも直営では指導員の人員を確保できない状況、つまり、それだけ現場で働くスタッフの労働条件が劣悪になっている事業を、民間委託したら、ウソのように人手不足が解消されて、民間のノウハウが導入されたり、企業間の競争原理が働くことでサービスも向上するはずという民間委託神話が教育現場の周辺にも深く根差すようになっていることがよくわかるわけですが、ここの議論をみるだけでも、この事業がとても一筋縄ではいかないと思わせる難しさを感じました。
そこで、教育委員会がとったのが、民間企業に任せるけれども、ロクにノウハウのない企業にやらせて何か不祥事が起きても困るということで、教育委員会からお目付け役のような人物を派遣したのではないか、それが教育局長までつとめた阿形氏だったのではないのかって、思いました。
似たような事例は、ツタヤ図書館誘致自治体でもよくみられる人事です。たとえば、2016年に駅前移転してオープンした宮城県多賀城市立図書館の初代館長は元小学校の校長( ツタヤ図書館、元協議会長が天下り? ツタヤ図書館、市から「天下り入社」疑惑の新館長を直撃!「市長から声かけられた」)でした。また2017年にこれまたツタヤ図書館として駅前移転した岡山県高梁市も初代館長も元校長(ツタヤ図書館、再び天下り人事疑惑)でした。
いずれも、受託企業に天下りさせることでお目付け役にしたいという教育委員会の思惑と、一方で受託企業側からすれば、役所と太いパイプを持つ人物を受け入れることで、より自分たちの都合のいいように事業を進めていきたいという思惑が一致した結果と言えるのではないかと思います。
そういう視点でみますと、阿形氏の委託企業への天下りは、典型的な官民癒着の構造を浮き彫りにしたものと言えると思います。
今回注目すべきなのは、教育長という絶大なる権限を持つポストに座った人物が、かつて天下りした企業の選定に深く関与する格好になったという点です。
私は、今回、阿形氏の天下りが判明した瞬間に、どうして西コミセンの指定管理者選定発表が構成企業を明記しない団体名だけだったのかというナゾが解けたように気がしました。
選定結果の発表を起案した職員はもちろん、その情報を発表ページにアップした職員も、ほぼ例外なく教育長が、学童保育を委託した企業へ天下りしていた事実を知っていたはず。なので、その天下り先の企業が新しいコミセンの指定管理者の代表企業になったことは、できれば表に出したくないという心理が働いたのではないのか。そう思わざるを得ません。CCCよりも、むしろ、㈱KEGキャリア‧アカデミーという社名を出したくなかったから、団体名のみ発表したのではないでしょうか。
担当課の生涯学習課はもちろん、担当課が議決スケジュールを相談したという教育政策課、さらには情報公開を担当する総務部市政情報班の方もみんな、「指定管理者選定発表で団体名だけで構成企業を出さないのはおかしいのでは?」という私の質問に対して「いえ、おかしくはないと思います」と回答していましたが、その言葉の裏には、なにかを隠しているかのようなニュアンスを感じました。
ということで、本日は、ここまでしにします。
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